第15話 有名?

 

「このトカゲめっちゃ美味かったですねェ」


と、骨になったダイオウイワトカゲの前で感想を一言。


あれからトカゲ討伐の報告をして、依頼完了の後に冷凍トカゲを家まで持って帰ってきた。すれ違う人達からすごい目で見られたが、全て気にしないことで解決した。


そこから事情を説明して、トカゲを料理していいことになった。


使用人には『そんなん食うとかマジ奴隷じゃん(意訳)』とか言われたが、素人はだァっとれの精神で完璧に調理してやった。


んで、めちゃくちゃ美味しかったから最初の感想に繋がる。


やっぱ美味くて害が無けりゃ、何食ってるかとか関係ねェよなァ。


「まさかまさかだ。あのトカゲから上質な鶏肉のような食感がするとは、世の中分からないな……」


うまいうまい言いながら食べてたら、マサムネさんが自分も食べるとか言い出したときは驚いた。周りも驚いてたが。


「ですよねェ。ちなみにヘビもそんな感じでしたよ」

「そうなのか。……食べたのか!?」


あー、まァ、そうなるか。


「オレ結構食べるの好きなんですよ。だから色々調べたんですけど、そんときにヘビも食べられるって知ってですねェ」

「そ、そうなのか。さすがに毒はないやつだよな?」

「んーいや、毒あるやつですよ? あ、もちろん毒除いて食べたから問題ねェです」


もっかい食べてェなァ……マムシ。こっちにもいんのかな。自分で採った食材使った料理は美味いんよ。


「……ヒビキはあれだ、刀の国の食文化が似合うのかもな」

「刀の国の料理ってヘビとか出てくるんですか?」

「恐らくは。動植物全般、毒がある物から毒を抜いて食うような国だ……」

「ヘェー」


なるほど。日本じゃん。


帰るまでの寄り道候補に入れとっか。刀の国ね。


「あ、そういえばご主人様今日はいるんですね」

「今更だな」



本日3度目のギルドである。


午前中にトカゲを狩って分かったが、戦闘においてオレのスピードは十分武器になると思う。


けど眷属育成大会まではあと5ヶ月ちょっとだし、そろそろ対人戦にも慣れとかねェとなァ……。


しっかし、そうなると人型の相手とかが最適なわけだが……クマか賞金首の犯罪者くらいしかいねェ……。


んー、まァ人相手は無しだな。ガチの殺し合いに発展する可能性とかマジ勘弁。


仕方ねェ。クマ狩りの時間といこ─


「お嬢さん、ソイツは止めといたいいんじゃねーか?」


後ろから強面のおにーさんが話しかけてきた。ベルトが至る所に巻いてある特徴的な格好をしている。


服装的にこの人も冒険者か。ショットガンもあるし。


「……どォしてですか?」

「おぉこえーこえー、そんな睨むなよ〜」

「……」

「わかったわかった、言うから言うから。その熊なぁ、この前北の門番に重傷を負わせたって噂になってんだよ」


それは……わざわざ言いにくるくらいだから多分すごいことなんだろォが……。


マサムネさんご主人様からは特に言われなかったんで、なんとかなりますよ。てかします」

「ご主っ…!? その首輪……まさかミカミ公のとこのか?」

「そうですけど、『ミカミ公』って…ご主人様そんなに偉いんですか…?」

「逆になんで知らねーんだよ! この国に住んでて知らないヤツいねーからな!?」


んなこと言われましても。


いやなんか立場が高ェんだなァとは思ってたが。


「うわー、マジかー……普通の美人だと思って話し掛けちまったじゃねーかよぉ……」

「まァ、とにかく気ィ付けますよ」


さっさと切り上げて行こうとする。


「あ、ちょっと待て。なら俺も付いてくわ」

「? ならって何ですか?」

「いや、アレだよ。どっちにしろこの先恩を売っとくのも悪くねーなー、って」


んー……まァ、味方が増える分にはいいか。


「構わねェですけど、オレを手伝ってもご主人様に恩は売れないと思いますよ?」

「いや、君個人にってのもあるから」

「?」


首を傾げる。


「え、まさか自覚無い?」

「自覚……あァ、30億の女かオレ」

「独特な自己認識」


これが1番覚えてられると思います。自他ともに。


てかオレが30億貰ったわけじゃねェから、恩を売られても困るんだが。



クマの目撃情報が最後にあった北門まで歩く。


「ところで、名前聞いてませんでしたねェ。ヒビキでーす、よろしくお願いしまァす」

「俺はレイイチだ。こちらこそよろしく〜」


強面のおにーさんことレイイチさんね、覚えよう。覚えられるかは別だが。


「レイイチさん、クマって剣で狩れますかねェ?」

「いやー、難しいんじゃねーか? ライメイグマは毛皮が分厚いし」

「そですか。なら…………」


頭を潰すか? いや、それだと対人戦の練習にならねェか。


凍らせる……のは相手が悪いな。目を狙うとかも難易度高ェ。


「……焼くか」

「発想怖っ!? 黒髪ってみんなこうなのか!?」

「さァ?」


オレ以外の黒髪をこっちで見た事ねェし……ホントにこの世界って黒髪いねェんだよなァ。


てか前にも誰かに言われたなそれ。誰だったっけな……。まァ、覚えてないってことはどうでもいいって事か。


「…ん? 焼くって、ヒビキは魔法使いか?」

「確かに魔法は使えますけど、『魔法使い』名乗れるほど……?」


『回復』『浄化』『収納』『氷塊』『熱線』……充分名乗れるのでは?


「魔法使い(18)でェす」

「お、おぉ…?」

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