第14話 魔法使いヒビキ?
ギルドに一人で来た。状況説明以上!
どの依頼にすればいいのかわからんなァ。
新年を迎えたことにより、マサムネさんはどこかに出掛ける事が増えた。多分、貴族の付き合いとかそんなんじゃねェか?
そんで、1人でトレーニングをするのかと思ったら出されたのは『冒険者ランクを上げる』っつゥものだ。
今日は1月19日。最初の一週間でランクは3まで上がったが、そこからが中々上がらない。
やっぱそろそろオオカミ狩りも卒業かァ……。
なら、上のランクの依頼にチェンジといこうじゃねェか。
んで、上のランクというと……これ良さげじゃん。
◆
移動の足、といえば大体は車になるだろう。
しかしこの星にはまだ性能の低い車ばかりで、舗装もろくにされていないような道を走るのは厳しいと言わざるを得ない。
なんならチャリの方がそういう道は早いし、馬の方が良かったりもする。
で、なんでそんな話をしているのかというとだな……。
車や馬なんかに代わる移動方法を試しているところだからだ。
靴底に氷塊を作り、スケートの要領での高速移動。
かなりの速度で森の中の道を進む。
「……危ねッ」
バランスを取るのが難しいが、これが現時点でのオレの足だ。
ホントはスノボーみたいにしてもよかったんだが、そこまで綺麗に氷作れないんだよなァ。それに、平坦なとこだと走った方が速ェ。
氷が減ってきたので、靴底から押し出すように増量する。
……そろそろ暑くなってきたなァ。
『氷塊』の魔法は使えば使うほど体に熱がこもるんだよなァ。逆に『熱線』は冷えてくるし、魔法はよくわからねェ。
まァ、コートを脱いでれば冷えてくるくらいには気温が低いし丁度いいといえば丁度いいんだが。
にしても、こうして走ってると普段の体力作りがいかに重要かがよくわかる。だって今もう15分はこの状況だもん。
……マジで山まで遠いんだよなァ。
どうにかして『熱線』をジェットエンジンみたいに出来りゃァ、もっとスピード出せるんだがなァ……。
背中からやろうとすると服燃えるし、まず反動として使えるレベルの火力が出せねェ。さらには燃費も悪ィ。
まァ、最後のは氷塊の燃費がイイってのもあるが……。消費が作る一瞬で済むからなァ。
結局は何事も努力よ、努力。練習あるのみ。
通った道に水の軌跡を作りながら、岩肌がむき出しの山道へ入っていく。
さて、スケート移動は終了っと。
そろそろ周りに注意しとかねェと。ここら辺が今回討伐する生物の生息地らしいし。
灰色の岩がそこかしこに転がる道で、落石を気にしながら獲物を探す。落石はほぼ無いとは言ってたが一応な。
今回の依頼内容は、『登山道を縄張りにしているダイオウイワトカゲの駆除』だ。
大きさは余裕で1メートルを超える。これは本で見た。写真付きで。
このトカゲで厄介なのが、鱗の硬さだ。岩で出来た鎧、といえるほどの硬度なんだと。
それならどうやって駆除するか聞いたところ、有効なのは──
右前方の岩から小石が飛んでくる。
「ッ!」
─ヒュン!
あっぶな!? 踏み込むのが遅かったら直撃コースだったぞ!?
横への回避で倒れた体勢を立て直し、防御重視で取り出した剣を構える。
相手は1体。2メートルほどのダイオウイワトカゲだ。
尻尾で小石を飛ばしてきたのか? 保護色見づら。てかめっちゃ目ェ合ってるんですけど?
まァ、それはそれとして。左右を岩の壁に挟まれてるせいで、自由に動ける幅はせいぜい5メートルくらいか。
あっちから攻撃してきた以上は、いつの間にか逃げられるってこたァねェ。
2発目の小石を飛ばしてくる。
「…お? …よっと。どうした? 尻尾振って小石飛ばしてりゃ満足かァ?」
予め口の中に小石を溜め込んでんのか。
不意打ちを対処できたんだから、ふつうに攻撃してきても躱すだけなんだが。てか予備動作で攻撃方法分かるのはどうなんだ…?
まァとにかく、遠距離戦に付き合うつもりはねェ。致命傷与えらんねェからなァ。氷飛ばして剣以上の火力は出んよ。
それに、有効な弱点を付くにはどのみち接近しないといけねェし。
剣をしまって、いくか。
魔力強化で身体能力を上げ、その上がったスピードでトカゲまで走って接近する。
20メートルちょいなら1秒も掛からないんだよ、なァ!
一瞬で近づき、3メートル超えの大きなジャンプ。壁を這って上に逃げようとしたトカゲに右手で触れる。
「氷塊!」
トカゲを丸ごと覆うように氷を生成。そのまま動かなくなった。
「ほッ!」
─ガンッ!
落下しながら壁を蹴ることで勢いを殺しながら着地する。
これでよし、と。いやァ、上手くいった上手くいった! ダイオウイワトカゲは体が冷えると動けなくなるって聞いてたからな!
まァ厳密には急激な温度の変化に弱いってだけだから、熱線でやってもよかったんだが……いかんせん魔力消費がなァ。
さて、そろそろ落ちてくるだろ。……お。
─ドゴンッ!
……2メートルのトカゲならこんな音にもなるか。
そんじゃ、徹底的に……ちょっと待てよ。
コイツって、焼いたら美味いのかな。
トカゲとかヤモリって食えるし、コイツもきっといけるんじゃねェかなァ……。
そうなんと、このデカさだから血抜きは必須として……。
……よし! とりあえず全身冷凍だな! 瞬間冷凍なら殺せるし、鮮度も保てるしで一石二鳥!
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