第12話 お祝い?
歌声に惹かれたのか、コクロオオカミがオレのライブに飛び入り参加してきた。数は6体。
「〜〜♪」
『グルルル…!』
もう少しでお気に入りのフレーズなんだよ! それまで大人しく聞いてろ!
『バウッ!』
「〜、っと、もう少しだったんだけど、なァ!」
ここに来る道中で渡された剣を抜き、近づいてきた1体目の首を斬り飛ばす。
やはり筋力! 筋トレは全てを解決する…!
まァ、剣の質が良いってのはあるんだけど。そらッ!
オオカミの行動パターンとして、飛び掛ってくるか足元狙ってくるかの2つが圧倒的に多い。
初戦として考えたら丁度いいなァ。魔力強化……はいいか。ミスった時用の回復の分に温存温存。
3体目を居合切りの要領で下から切り上げ、振り向きざまに左足で頭を蹴る。
─グシャァ…!
うげェ、嫌な音したぜ。血で靴も汚れるし……。最後に浄化する手間が増えた。
オオカミは怯えている。
「逃がさねェよ?」
─ぶちっ ぎちち… ばんッ!
はい、終了。
「ふふふっ…! 意外と容赦がないな?」
「そりゃァ、それが依頼ですしィ?」
「違いない」
◆◆
報酬は普通に金だった。生計立ててる人いるのも納得だわ。
……いつかはオレも世話になるのかもなァ。
オレ達はオオカミを狩ってギルドに戻り報酬を受け取った後、お昼ご飯を食べに店へ来ていた。
でもって、このお店ってのはマサムネさん御用達の高級店なんだよなァ……。こんなとこオレが入っちゃダメだよなァ、普通は。
「どうだ? 美味だとは思わないか?」
「オ、オイシイデス……」
緊張で……味が分からん……! あと作法も分からん!
多分牛肉と、なんか高そうな野菜。なんだろうねコレ。
「ヒビキ、朝の歌は良かったぞ」
「! あ、ありがとうございます……!」
やった。嬉しい。
「最初の数秒で簡単に引き込まれてしまったからな。途中までしか聞けなかったが、是非ともフルで聞きたいものだ」
あ、そ、そんなに? オレより上手い人の歌聞いてると思うんだけど……。
「なんていうんだ? あの歌」
「『妖精のアソビウタ』です。オレのお気に入りなんですよ、アレ!」
「なるほど、他にも聞きたくなってくるな」
「今度歌いますよ」
そこからは、ご飯が美味しく感じた。
◆
「前はよく歌っていたのか?」
「よく…いや、うーん…そこそこ歌ってましたねェ」
「ふふっ、これからも好きに歌うといい」
「機会があれば」
家だとタイミングがなァ……。
「ところでヒビキ、ワインは好きか?」
「えっ、飲んだことない、です」
「まぁそうか。今何歳だ?」
「18ですけど…」
「ならこの際だ」
マサムネさんは店員を呼び、何かを頼んだ。
不思議に思っていると、運ばれてきたのはワイングラスと緑色のワインボトルだった。見たらわかる高いやつやん。
……え、飲めと? 法律大丈夫? 未成年飲酒にならねェ? てかまだ昼よ?
「初めての依頼達成は祝わないといけないだろう?」
そういうもんなのか? イマイチ感覚がわからねェ……。
「心配しなくとも、度数は低めだ」
いや、低めって言われましても……。でも、飲む分には問題ないって事でいいのか?
「それじゃァ、ありがたくもらいます」
「失礼します」
店員さんが線を抜き、グラスに注いでいく。
とくとくとく、と子気味のいい音を鳴らし、同時に香りが広がる。
よく分からんが……白ワインだな! ヨシ!
「……コレ飲み方とかありますか?」
「なくはないが、俺達以外誰もいないんだ。気にせず好きに飲んでみるといい」
「なら、遠慮なく……」
さすがにジュース感覚では飲まない。が、なにぶん初めてだしなァ……。ちょびっとずつね。
グラスを手にし、ゆっくりと口元に近づけ…飲む。
…………みゅーん。
な、なんとも言えない……オレもまだまだ子供ってことかなァ……。
「ふふっ」
「……何ですか」
「いやなに、案外ヒビキも子どもらしいところもあるんだな」
「……」
あなたと比べたらそりゃァ、みんなそうでしょ。
「で、どうする? ジュースに替えるか?」
「……飲みますよォ」
「ふふっ」
んぐっ……やっぱ変な味。
そして30分後。
「いやァ、やっぱりご主人様って優しいですよねェ〜!」
「そうだろうそうだろう! なんたって俺はミカミ家のマサムネ様なのだから!」
「「アッハッハッハ!」」
片方は初めてのアルコールにやられ、もう片方はそのやられた方が気を良くしているのにつられただけという状況が出来上がった。
店員は頭を抱えている。
◆
午後、寝る前に水を飲んだ後『回復』して酔いが覚めた。なんてタイミングだ。
しっかし、まさかちゃんと酔うとはなァ……。なんか失礼なことを言ったような言ってないような……。
ま、まァ、多分平気だろう!
てか『回復』で酔いも治せるとか万能過ぎるわ。
はァー……ねむ。
今日は色々あったなァ。主にオオカミ狩りで。
命を奪う行為はストレス掛かるからなァ。海産物の処理で慣れてなきゃ、どうにかなってたかもな。イカとタコに感謝。
オオカミよ、どうか安らかに眠れ。オレも高級ベッドで明日の朝まで寝るから。
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