第11話 冒険者に?
拝啓地球にいるマサヒコへ。
クリスマス真っ只中の12月25日、いかがお過ごしだろうか。オレは19世紀のロンドンを感じる国で元気に過ごしてまァす。敬具。
絶対に送れない手紙終了。
さて……この世界にはクリスマス文化は無く、もうすぐ年が変わるだけとなっている。
だけ、というわりには年末の賑わいで街が活気づいているが。
そう、オレは今……街にいるのだ! 呼吸しづれェ!
何故こうなったか。簡単に言えば、冒険者になるために街に連れてこられた、だな。
詳しく言うと……ある程度『氷塊』と『熱線』が出来るようになり、体力と魔法は合格点をもらうことが出来た。
あとは実戦経験だけということになり、冒険者として戦闘系の依頼を受けることになったわけだ。
そして学生服っぽい戦闘服でこの街へ来た。コートがあるから寒くねェのは嬉しい。
マサムネさんはこの街では有名らしく、歩くだけで視線が集まる集まる。忘れてたけど、そういや貴族だったなァ。
「ここが冒険者ギルドだ」
「意外と洒落てるんですねェ……」
周りの街並みとズレていない、外見は大きめのカフェといった感じか。
「入るぞ」
「はい」
ドアは無いが、オレだけだったら入るのに躊躇っただろうな。1人でカフェ入るのとか苦手、つゥか入ったことねェわ。
オレ達が中に入り、職員がこちらに気付く。
……遠くで座ってる人含め、大体がこっち見てんなァ。何だよ、見てんじゃねェ。
「ヒビキ、こっちだ」
「あ、はい」
カウンターの方へ移動する。
若い女の職員が若干ぎこちない笑顔で対応する。貴族だから緊張してんのかな?
「本日はどのようなご要件で…?」
「コイツの冒険者登録をしに来た。出来るな?」
「しょ、少々お待ちください!」
パタパタしながら奥に引っ込んでった。
暫くして、別の職員が戻ってきた。いかにもベテランの壮年男性だ。
「お待たせ致しました、マサムネ・ミカミ様。本日はそちらの少女の冒険者登録をしたいということでよろしいでしょうか?」
「そう、ヒビキの冒険者デビューという記念すべき日だ! よろしく頼むよ」
どこでもそんな感じなのかァ……。
「かしこまりました。それでは、こちらの用紙に記入をお願いします」
「ヒビキ」
「ありがとうございます」
今更だけど奴隷でも冒険者登録出来るんだな。
どれどれ……まァ、普通だな。名前とか性別とかそんなもんよ。
「終わりました」
「確認します……問題ありません。それでは……こちらに手を」
そう言って置かれたのは、タブレットサイズの何かの魔道具。
本で見たが、名前なんだったけ……でも水晶とかじゃねェんだよなァ。違和感がすげェ。
右手を魔道具に置く。
─ピピッ!
いや音ォ! 電子音じゃねェか! もうちょっとなんとかなんなかったのか!?
「…もう大丈夫ですよ」
「あ、はい」
◆
「こちらが冒険者カードになります。紛失などした際、再発行には500エル掛かりますのでお忘れなきよう」
「はァい」
『ヒビキ ランク1』
なんだか学生証みてェだなァ。これどこにしまっとっか……。
……ポケットに入れるフリして『収納』送りだなァ。そいっ。
「依頼はあちらの掲示板からお選びください」
「ありがとうございまァす」
あー、なんかいっぱい貼ってあんなァ。
……モン○ン。
「好きなものを選ぶといい」
「はい」
掲示板の近くに移動する。
さて、どれにしようかなァ、と。
マサムネさんは『好きなものを選ぶといい』つってたが、好きなものって言われてもなァ……。
……あ、コレあんときのオオカミじゃん。場所も森だし。肝心の内容は、過剰に繁殖した分の駆除ねェ。何? 野生化でもした?
まァいいや、これにしよ。ランク1でも受けられるみてェだしな。
……で、コレどうすればいいの? 持ってくん?
コレどうすればいいんですか? という目でマサムネさんを見るオレ。
「上のクリップを外して持ってくればいい」
「なるほど」
言われた通りに外し、カウンターへ持ってくる。
さて……初めて異世界らしいこと出来る! 頑張らねェとなァ!
◆
久しぶりの森に来た感想はァ……『そういやこんな感じだったなァ』だ。
「コクロオオカミはこの森に生息する。狩る数は5体。ヒビキ、どうやっておびき寄せるんだ?」
「そォですねェ……ニオイとか音に敏感そうなので─」
適当に森でウロウロするってのは、スタイリッシュじゃねェし……。
「歌、なんてのはどうでしょう?」
「ほう、そこまで自信に満ちているとは。面白い」
そりゃ自信あるぜ? 音楽の成績で3以下になったことねェからなァ。誰かの前で歌うのもそこそこ好きだし。ただ、最近はあんまし歌う機会なかっただけで。
歌うのは…ゆったり系のバラードにすっか。
目を閉じて、大きく息を吸う。
……よし。
「〜♪ 〜〜♩ 〜♪」
よく通る歌声が森に響く。
うん。
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