第10話 神の存在?

 

魔法について詳しく知るため、暫くは座学をすることになった。足の近くの氷を砕いて近くの椅子まで移動。動かして向かい合わせる。


本日の講師、マサムネ先生。生徒、ヒビキことオレ一人。学校っつゥか塾だなァこれじゃ。机無ェけど。


「これはどの魔法にも言えることだが、詠唱文はそこまで長くない。一呼吸で読み切れる場合がほとんどだ」


ヘェ。くそ長詠唱を敵の前で言う必要はねェのか。便利でいいな。


「例えば『氷塊』。この魔法の詠唱文は、『solid:phase transition:ice block』だ」


……え、英語!? 今の英語だよなァ!? 詠唱文まさかの英語!? 英語あんの!? 日本語だけじゃねェんだ……。


「今のを魔法を使う意思を持った状態で言うことで『氷塊』は発動する。他の魔法も同様だ」

「…質問いいですか?」

「許そう」

「詠唱文ってなんで英語なんですか?」

「英語…? 詠唱文は全て『神話語』だぞ?」


えっ。


「それとも、ヒビキの住んでいたところではそういう言い方をするのか?」

「あ、はい」


英語は英語としか呼ばない…よな? 多分。


…あれ、これもしかして日本語も『日本語』じゃねェ言い方する? だとしたら明らかに勉強不足…ッ!


「そうなのか。しかし、この国では『神話語』以外には呼ばないんだ。『神話語』でいこう」

「はい。なんかすみません」

「いい、気にするな。それで、何故『神話語』なのかについてだ。その答えはただ一つ! それ以外の言語では魔法が使えないからだ!」


この上なく単純な理由だった……。


「詳しく言うならば、魔法は神がもたらしたものとされている。だからこの星に住む生物が魔法を使うには、神が定めた詠唱文でなくてはならない! そういうことだ」

「なるほどォ。ありがとうございます」


神とかいる……いや、あるんだなァ。いるかどうかはまだ不明だし、概念として存在してるとだけ思っとっか。トレーニング終わったら調べてみよ。


その後も芝居がかった動きが若干気になる中、オレとマサムネさんの授業は進んでいく。


尚、半分くらいは悪魔が生まれる前の『神話』と『古代』の話だったことをここに記す。



意識するのは自分の中の魔力。


右手で地面に触れ、氷塊の詠唱をする。


「『solid:phase transition:ice block』」


地面が氷に覆われる、ことは無かった。


「え、あ……なん…」


あっれェ?


魔力は減った感覚はあるのになァ……。


「その手を退けてみろ」

「あ、はい…………あっ」


手のひらのあった場所に、半径3センチメートルほどの円形の氷があった。


「いやちっさ…!?」

「ハハハッ! 最初はそんなもんだ!」

「そ、そういえばさっき言ってましたねェ」


まさかここまでとはなァ……。


でも、よかったァ。魔力強化の近接特化キャラになるとこだったぜ。魔法(物理)、みてェなことになるかと思って焦ったわ。


「魔法は何度も使うほど洗練されていく。今日は魔力が尽きるまで『氷塊』を使え」

「はい!」



『神』というのは実在するのか。その答えを見つけるべく、オレはアマゾンの奥地…ではなく資料室の奥地へと向かった。


探すのは『神話』とか『古代』なんて書いてある本だ。


あるかなあるかな、と埃っぽく薄暗い空間を歩く。


……これか?


『神が創りし世界』


『天使と悪魔の存在から紐解く神実在の可能性』


ど、どォなんだコレは? 一応他のも探すか。


……あ、そうだ。ついでにあの石板に関する本も探すかなァ。『神隠し』とか書いてあったら嬉しい。


てか『神隠し』について知ってるか、とか聞いたことなかったなァ。後で聞っか。



日本以外では湯船に浸かる習慣は少ないらしいが、この悪魔の国では普通にある。なんでか聞いたら、『昔は温泉があったから』なんだと。


温泉って無くなんの? 地殻変動? まァいいか。


今現在こうして入れるならどォでもいい。


「本格的に寒くなってくると、風呂のありがたさを身に染みて理解出来るな……」

「ですねェ……」

「出た後寒いと分かっているから尚更な……」

「わかりますその気持ち……」

「「……はぁー」」


2人で入っても余裕もって脚伸ばせる風呂って、控えめに言っても最高では? 今のオレ並の社会人より人生の幸福度高ェかもしれん。


誰かと一緒に入るとか修学旅行以来だったから、最初はビックリした。でも人間何でも慣れよな。


1ヶ月半以上もこうしてたら、それが当たり前のように感じてんもん。『裸? 今更何?』って感じ。


まァ、誰にでもってわけじゃねェ。見ず知らずのヤツに見られたらそりゃ嫌よ。オレの体は安くないんでなァ?


……正直、警戒したことはある。


でもアレなんだよな。人間がシャチなんかとそういう行為をしねェのと同じで、悪魔は悪魔同士でしかやらねェんだと。ご主人様って呼ばせてるくらいだし。


人間と悪魔って人間からは見分けがつかねェが、悪魔は見分けがつくらしい。不思議だね。


「……あ」

「ん?」

「そういえばご主人様に聞きたいことがあるんですけど……」

「いいぞ。何でも聞いてみろ」

「ありがとうございます。『神隠しの石板』の噂って聞いたことありますか?」

「神隠しの石板……? 神隠し自体は知っているが、石板というのは初めて聞いた。故に噂も知らない」

「そう…ですかァ……」


マジかァ。


「他にも何かあるか?」

「あ、じゃあ…『神』って実在していた生物なんですか?」

「…難しいな。答えとしては、『実在は確かだが、生物かどうかは不明』だな」


実在したの!?


「神について書かれた資料は数知れず。例えば黒髪の少女であったり、巨大な白蛇であったり、はたまた一振の刀であったりと。しかしそのどれもが共通し、神の存在を強く主張している」


それ神が沢山いるだけじゃァ……?


まァでも、いたにはいたって事か。信じがたいがな。


「ありがとうございます。……あの、ちょっとくすぐっんっ…たいんですけど……っ」

「肌触りがいいからな……イルカみたいで癒される」


イルカ……???


「…そですか」


いや、だからって……後ろからハグって…んっ……。

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