第4話 奴隷?
夕日が眩しすぎる問題発生。車の運転でサングラスを掛ける人の気持ちがちょっとわかった気がするぜ。
森の中は日差しを遮るもの葉が多いから平気だったんだけどなァ。まっすぐに開けてる道だとキッツい。
あと、魔力(仮)は時間経過で回復することが分かった。体力と似たようなもんかな。
ゲームの魔法みたいな力を手に入れた、つってはしゃげるような状況だったらなァ……。
完全に遭難者だもんオレ。
歩いても歩いても変わらない景色に飽きを感じ、たまにイチゴのようなフルーツを口に入れながら歩き続ける。
オオカミが襲ってくることはなかった。恐らく、道は人のナワバリ的なアレなので近づかないようにしているのだろう。単純に運がいいだけかもしれねェけど。
でもやっぱ一度日が落ち始めると、完全に沈むまでが早いこと早いこと。『これぞ秋の空!』って感じするわァ。
……暗い。不安になる。さすがに歌ってはいられない。
行方不明として警察に届けられてるよなァ、多分。テレビに載っていませんように。…いやテレビに載った方が捜索隊増えるか?
……寒っ。
やっぱこの格好サバイバルに向かなさ過ぎるよなァ。かなりボロボロになったワイシャツとズボンだけって……。ブレザーとネクタイは家。
男より女の方が体温は高ェんだっけ? 自分じゃよくわかんねェよ。体つきも貧相だし。かなりまな板だよコレ。
ってそんなことはどうでもいいんだよ。昨日は混乱で寒さとか気にしてなかったが、今はそうじゃねェからな。
『回復』で疲労までは回復できないんだよなァ。つまり、寝ないっつゥ選択肢はナシ。
カバン抱えながら寝るか? ……めんどくさいし、もうそれでいいか。もう結構疲れたわ。
◆
「──!」
「────?」
んァ? もう朝か? 今何時…─
「誰ェ!?」
バッ、という擬音が見えそうな勢いで飛び起きる。
目の前にいるのは、悪い顔をしたオッサン2人。そこから少し離れた位置に馬とそれに繋がれたデカい檻…馬? ……馬!?
はァ!? どういう状況…って、そうだったわ。ここ森じゃねェか。
……いや森でもおかしいな!?
「─おい! 聞いてんのか!?」
「え、な、何がでしょうか……?」
なんだこのオッサンきも……。いい歳した大人が子ども相手に怒鳴り散らかしてんじゃねェよ。
「早く後ろの檻に入れって言ってんだよ! こっち来い!」
オッサンの1人が腕を掴んで引っ張る。
「ちょ、痛いです、って手錠!?」
いつの間…寝てたなァ……。思いっきり爆睡だったんじゃねェのオレ? 警察には見えないし、誘拐に次ぐ誘拐…? どんな確率だよってか首輪まで付いてんじゃんキッショ。
檻に近づいて、中の様子が分かった。
何人かの少年少女が、ボロ布みたいな服装で俯いている。
「オジサン達、誘拐犯かなんかですか?」
「見てわかんねぇのか? 奴隷商だよ」
何言ってんだこいつ。もしかして薬物か? だとしたら逃げた方がいいのか?
もう1人のオッサンが檻を開け、その瞬間にオレは後ろから蹴られた。
衝撃でバランスを崩し、前のめりに檻の中へ倒れ込む。
「いッ……ちょ待ッ…!?」
─ガシャン!
「えェ……」
「大人しくしとけよ? 問題を起こしたら…分かるよな?」
その言葉に周りの子ども達が小さく『ヒッ…』と反応するが、オレには全くわかんねェ。
なんだろ? 殴られるとかか? それは嫌だし大人しくしとっか。
……まァ、人とは会えたし良しとすっか! 多分水くらいはくれるだろうし、食い物も最低限は提供されるだろォよ。あとは警察待ちだな。
移動を開始したのか、檻がかなり揺れる。
「お、お姉さん…大丈夫?」
「ん? あ、オレか?」
『お姉さん』って……そうか、オレ今女の子から歳上の女性に見えてんのかァ……。なんだか複雑。
「状況をよく分かってねェからなァ……まァ怪我はねェ、平気だ。…それともオレの体ヤバかったりする?」
てかその髪地毛? その歳で水色はだいぶロックだな。
「えっと…言いにくいんだけど……」
ちょっと何だよ、そんなに深刻そうな顔しちゃって。
「遠慮はいらんよ」
「じゃ、じゃあ言うね」
「おう」
「お姉さんの首輪……『奴隷の首輪』だよ……?」
?????
……話合わせとっか。
「…………なるほどなァ、そいつはやべェかもなァ」
「それで、私たちこのまま……悪魔に…売られちゃうよ……! うぅ…!」
「お、おう分かった。とりあえず落ち着け」
なんだか疑問が増えたが泣かれるのはマズイ…!
「ほら深呼吸だ深呼吸」
「ぐすっ……!」
「あー、よしよし」
手錠邪魔だなァ……あ、いや、でもなァ。
と、とりあえずは……子どもがこうなるくらいには酷いことしてるかもしれないヤツらに手錠と首輪をはめられたわけか。
……ここホントに日本か? まァ、日本語だから日本…か、日本語圏のとこ。後者の可能性は限りなくひっくいだろォがな。
てか今何時? 酔いたくないから二度寝していィ?
……イラつく。何でこんな状況になってんだ?
「あの……」
「ん、どした」
「お姉さんの名前、なんて言うの…?」
「ヒビキ、だ。……あ、名字は
「名字……家名?」
「いやそんな大した家じゃねェよ」
至って普通の一般家庭だ、ウチは。
「でもって、キミは?」
「私はアリシア……です」
「……最近の名前って感じか? いいと思う」
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