第3話 木の実?

 

新しい朝が来たのはいいが、後頭部と背中がかなり痛い。あと落ちそうになってビビった。


……そこそこ喉が渇いてんな。でも飲める水なんて森の中にあんのか? サバイバルの知識なんてねェが、水があった方がいいってのは知ってる。


一応、空の水筒はあるから……いや空の水筒でどうやって水確保すればいいんだかわからん。


水場を探すしかねェか? くっそ時間掛かりそうだなァオイ。


オオカミ共にも注意しなきゃだし、何も食べてないから体力が回復しきってねェ。


前途多難。現実は非情だ……。


とりあえず降りて……降り……降りるの怖い……。



「〜〜♬ 〜ん?」


食料と水を探しつつ、森の中を歩くことしばらく。体感30分程経ち、やっと食べられそうなものを見つけた。


初めて見るフルーツだ。


なんこれ。ちっさいイチゴみてェな…何? ……まァ、名前なんてどうでもいいか。


何個かあるけど、食えんのかな……? 毒とかあったら嫌なんだけど。


でも植物の毒なら『回復』でなんとか…なんのか? 『回復』はあくまでオレの細胞を修復する力だからなァ……。


トリカブトみてェな毒があったら余裕で死ぬ。


パッチテストがどうの、みたいな話は聞いたことあるが……まァ、覚えてないわな。


うっし、オレ以外のヤツに食わせて毒有るか判断しよ。例えば、オオカミとかな。


そうと決まれば、ここにある分は全部持ってっか。ぶちぶちっ、とね。


収納。これホント便利だよなァ。現代科学を超越してる気しかしねェけど。



3度目のエンカウント! はい木の上に避難!


『グルルル! バウッ!』

『バウバウ!』


フハハハハハ!! バカめ! 貴様らでは登ってくることなど出来まい!


…あちょっと組体操染みた方法で近づいてくるのは聞いてねェ! 落ちろッ! オラッ!


足でゲシゲシとオオカミの顔面を蹴り、地面へと落とす。


っと、忘れるとこだったなァ。『収納』から取り出して……そいっ。


─パクッ


あ、普通に食えるみてェだな。吐き出したりしてないってことは、そういうことだよな?


念の為、もう少し待ってからオレも食べるとするかねェ。


つってもな……これだけじゃオヤツレベルなんだよなァ。食うけど。


「げしげし……」

『キャン…』


油断も隙もあったもんじゃねェ。


さて、そろそろ食ってみるか。


お味は如何程で? ……酸っぱ、あんま美味しくねェな。分かってはいたがイチゴとは別物か。


まァ贅沢言えないから全部食うんだけどな。


ところで……下にまだオオカミいるんだよなァ。どうやってこの状況乗り切っかな。


カッターで追い払えたら楽なんだが……昨日みたいにはいかねェよなァ……。こうやって何度も蹴ってたら離れてってくれない? てかどっか行けよ。



持久勝ちしたわ。


登ってこようとしてくる度に蹴り落としていたら、段々とオオカミ達の体力が減ってきたって感じだな。


後はそこにカッターを振り回しながら突っ込んでフィニッシュ。殺してはない。必要がねェからな。逃げてきただけよ。


というわけで人探しを再開したわけなんだが……。


マジで誰もいねェし、この森広すぎんだろ! ふざけてんのかッ!


いや、マジで自然保護区とかなのここ? 日本でそんな場所……何ヶ所かはあるだろうけど、こんな広いか?


誘拐されたかもわからないのに、その上で放置ってのはいただけねェなァ?


あー、喉が渇いてイラつく。


砂漠でオアシス探すよりかは楽なんだろォけど、森で探すのも変わんねェよ。インドア派にはキツイぜ。帰って歌いながらゲームしたい。


そんなことを考えながら歩くこと20分程、途中でイチゴのようなフルーツを集めつつ水場……ではなく道を見つけた。


左右に伸びる一本道だ。


「……まァまァまァ」


人の痕跡を見つけられただけよかったとしよう。でも先に水が欲しかったかもしれん。


……やっぱ酸っぱいなコレ。若干の水分はありがたいが。あと17個あるし、最低限は平気か。


てかやってる事がなんだかマ○クラみてェだな。ゲームモードはアドベンチャー、難易度はハードってところか?


ま、とりあえずはこの道を進んでいくとするかァ! 右と左……左にするか? 右はなんか山が見えるし、太陽眩しいし。


いや、あの山が何かで変わるか。登山とかで有名なとこなら人いるだろうし。


ここが関東だと仮定すると……ダメだ、富士山と高尾山くらいしか名前知らねェ。スマホがありゃァ、地図出せば何とかなりそうなのになァ……。


仕方ねェから左だな。大体今が午前11時くらいで太陽があっちだから…左は北? で、いいのか?


サバイバル知識皆無過ぎて悲しくなってくるな。


でも実際、現代人なんてスマホがねェとこんなもんだよなァ……。これがスマホ社会の代償ってか?



残り7個で、そろそろ夕方。


どれだけ歩いただろうか。脚が痛い。小学生のときにマラソンしたのを思い出すわ。


……これさ、『回復』で治せたりしねェ? 原理的にはいけるはずなんだよな。細胞の修復なんだし。やってみる価値はあるよな?


いざいざ……回復しろー。治れー。


……治ったなァ。なんかもうズルくねェか? 持久走とかシャトルラン無双出来るヤツだろコレ。魔力(仮)には気を払う必要あるけど。

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