第45話 5度目のクリスマス・イヴ⑦

 結果だけ報告すると、天津さんを全裸にするという選択肢は、BADENDに終わった。


「にしても、思い切り心臓をひとつきされるとは……」

「当然の報いです!」


 時刻は、午後2時を回ったところ。


 四択の内、一つを外した僕は、慎重になっていた。


〇このゲーム、アイスピック好きだよなー。


 春一は暢気にメッセージを打ち込む。


「アイスピックに刺された時も見てたのかよ……」


〇そりゃそうだ。俺らは一心同体だからな。


 水杷に刺された際は、それはもう衝撃的だった。


 何回やりゃいいんだと、うんざりしたもんだ。


「私だって、出来ることなら穏便に済ませたいんですけどねー」


 アイスピックで刺した理由については、先ほど明らかにされた。


 何でも、らしい。


 便利な言葉だが、ゲームである以上、文句は言えない。


〇自己学習で現れた選択肢にも、行動制限がかかるなんてな。このゲームを作ったやつは、よっぽどの天才か狂気持ちだろうな。


「あ、ちょっと待って。それめっちゃ聞きたかったんだけど」


〇……あ? なんだ?


 引っかかりを覚え、春一に問いかける。


 ゲームのタイトルは、【エンドレス⇄スノウ】。プレイできるゲームハードは、【イヴ】――


「このゲームの制作者って、誰だよ」

「あれ? 言ってませんでしたっけ?」


 天津さんが、小首を傾げる。


 胸がたゆんっと揺れて、めっちゃかわいい――ってのは、置いといて。


「どっかで聞いたかも知れないんですけど、上手く整理できてなくて……」


〇【エンドレス⇄スノウ】の開発元は、株式会社【ミズハ・コーポレーション】だ。ゲーム開発会社の中で、最も早く、イヴでプレイできるソフト制作に挑戦したベンチャー企業だ。


「あ、確かにその名前、聞いたかも」


 不具合が起きた時に、詫びを入れていた会社だと思い出す。


 それと同時に、聞き慣れた言葉に僕は反応した。


「ミズハって、あの?」


〇恐らくな。【ミズハ・コーポレーション】はよく、キャラクター名に「ミズハ」の名前を付けるからな。


「そうだったのか。でもそれって、何か不具合に関係してたりしないのか?」

「しません」


 問いに答えたのは、天津さんだった。


 しかも、えらくバッサリと僕の疑問を切り捨てた。


〇まぁ、会社名を覚えてもらうため……。なんだろうな。企業努力というか、単なるPRというか。


 ヒントになると思いきや、思い違いだったらしい。


 何か見落としていることはないか。


 今一度、状況を整理しようとしたところ、天津さんが痺れを切らした。


「悩むのは後にして、まずは選択肢を全て処理しませんか?」


 便宜上、服をはだけさせたままの彼女がそう言うのも無理はない。


「す、すみません!」


 慌てて、選択肢を選び直す。


――――――――――――――――――――

※天津叶をどうしますか?

 全裸にする

▶半裸にする(上)

 半裸にする(下)

 何もしない


 こういうのは、まずは上からだろう。


※半裸にする(上)、を選択しました。


※オートセーブします。

――――――――――――――――――――


「で、では失礼して……」

「は、はい」


 僕は天津さんの上着に手をかける。


 ブラジャーは、先ほど外したせいか、着けてはいない。


「いきますよ……」

「ちょ、ちょっと! 隠させてください!」


 バンザイのポーズで、一気に脱がせると、その先に、二つの肉の山が鎮座していた。


「きゃあぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 慌てて腕組みをする彼女だが、無論、上乳も下乳も隠せてはいない。


〇いや、むしろそうなるのは分かってたことだろ……。


 呆れるように春一が述べる。


 しかし、そんなことは今、どうでもよかった。


「も、もみてぇ……」

「ダメダメダメダメダメ~っ!」

「じゃ、じゃあ……吸わせて?」

「ダメに、決まってるでしょっ!!!」


 ふんっ!


 天津さんは、一心不乱に、アイスピックを振り回した。


 一体、どこからやってくるのか。


 やれやれ。


 心臓を突かれても尚、僕は冷静さを保ったままであった――



――――――――――――――――――――

※BADEND――


※ロード中です。


※ロード中です。


※ロード中です。


※セーブポイントに戻ります

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