第44話 5度目のクリスマス・イヴ⑥

「こ、これは選択肢が現れたから許容したことですからねっ!」


 我が家のマットレスの上で、天津さんは嫌々そう語る。


「もちろんですっ」


 新品のランドセルを背負い、初めて小学校へ登校する時に似た、わくわく感が僕の爪先から頭までを支配する。


「本当に分かってるんですよね? ……もうっ」


 天津さんは諦観し、自らの服を半分脱ぐ。


 ぶるんっ!


 服の上から現れたのは、黒のブラジャーを纏った乳であった。


 畑じゃないのに、メロンが二つ――


 熟れに熟れた天津さんの乳を、ゆっくりと揉む。


「……なんか、手つきがやらしいです」

「いやらしくなんてないですよっ! これが普通ですっ!」

「そうとは思えないですけど」

「ところで、相談があるのですが」

「これ以上、何を私にさせようと?」

「あ! そんな警戒しなくて大丈夫ですよ! ただ――」

「ただ?」

「ブラジャーのホックを外してもいいかなと」

「……変態」


 蔑むように、僕を見つめる天津さん。


 これでゾクゾクするのだから、僕も相当マゾだろう。


 といっても、天津さんはそこまでは許してくれなかった。


「……くそっ。だめか」

「ダメに決まってるでしょ……」

「じゃ、じゃあ! 下はどうですかね!」

「下って?」

「スカートを脱ぐのはどうでしょうか?」

「変態もここまでくると、清々しいですね」


 吐き捨てるように、そう言われるも、そこでハプニングが起こる。


――――――――――――――――――――――

※スカートを脱がせますか?

▶はい

 いいえ


 なんという僥倖か!


※はい、を選択しました。

――――――――――――――――――――――


「なんで……っ!?」

「選択肢が現れたので……」

「ちょ、ちょっとほんと無理! 無理無理無理無理!」


 逃げ出そうとする天津さんの腰を、両手で掴む。


「ちょっ!」

「まぁまぁ、変なことはしませんから!」

「いや、もう十分してるでしょっ!」


 スカートのジッパーを、ジーッと下へと降ろす。


 まるで、袋とじ写真を開ける時みたいに、心臓がバクバクする。


 天津さんのスカートをずりゅんっ。と降ろしきると、現れたのは、何ともセクシーな黒のTバックであった。


「うわぁ」

「変態! 変態変態変態変態変態っ!」


 あまりの感動に気を緩ませると、隙を見た彼女に足蹴にされる。


「ぐは!」

「ほんとありえないっ! 調子に乗るなっ!」

「いや、でもっ! これは選択肢が現れたからやったわけで!」

「だからって、無理矢理するのはダメでしょっ! これはなんだからっ! ちゃんと、口説き落としなさいよっ!」


 ゲームの進行役らしい、真っ当な意見であった。


 天津さんに叱責されていると、思い出したかのように、春一が口を挟む。


〇しかしだな、選択肢が出てる以上は、掘り下げる必要がある。


「やっぱりそう思うよな!」


 流石、分かってるなぁ!


 そう思ったのも束の間、春一は恐ろしいことを宣い始めた。


〇ただ、選択肢を間違った場合は、必要があるけどな。


「えっ……」


 てことは……?


「あはっ。つまり、必要があるということですね?」


 嫌な予感が的中する。


〇強制終了させるには、そうするしかないだろうな。


 春一の言葉に、天津さんがだんだん調子づく。


「よし! では、任せてください! 介錯は私がして差し上げます!」


 卑猥なことをした報いなのだろうか。


 選択肢が責め立てるように、現れた。


――――――――――――――――――――――

※天津叶をどうしますか?

▶全裸にする

 半裸にする(上)

 半裸にする(下)

 何もしない


 取るべき選択は――


※全裸にする、を選択しました。


※オートセーブします。

――――――――――――――――――――――


 毒を喰らわば、皿まで!


 強引に天津さんを引き寄せると、彼女は笑った。


「トゥルーエンドじゃなければ、殺しますからね?」


 冷たい言葉を無視し、僕は彼女のブラジャーのホックに手をかけた――

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