4-3 川沿いの森の中で 3
彼は草木の茂った場所から湖の方を観察する。しかし、そこから、水面を見ても意味はなく、魚影が映っているのかすらわからない。しかし、そこから不用意に近づけば、また敵に襲われるのは間違いない。相手の動きが目で捕らえられていないため、水面からの攻撃を回避することができないだろう。盾を構えたところで、そこ以外の場所に噛みつかれれば、盾も意味がない。
「体を全方位から守る? こういう服のようなものを、金属で作る? うっ、あぁ、もうあるってことか。これは、鎧か」
思いがけなく、彼は鎧の知識を思い出したが、全身鎧を今作成すれば、体力が底をついてぶっ倒れることは間違いない。相手は森の中に入ってこないようだが、それは今だけの話かもしれない。ずっとそうだが、眠っている間に、殺されるのは勘弁だ。今場所で、そんな無様な死に方はしたくない。彼はこの湖の攻略に行き詰っていた。彼は一度、森の中から少しだけ手を出した。しかし、相手はその程度だと反応しないのか、水面の様子は変わらない。先ほど噛みついていた魚を倒したから反応しないのか、手だけだからはんのうしないのか。彼は森の中からこそっと体を出した。それでも相手は反応しない。先ほどの場所には既にあの魚はいないのかもしれない。もし、すぐそこに魚がいるとすれば、仲間の位置に反応して、水面から奇襲のように突撃することができていたということだが、もし、いなければ相手は何かの方法で、自分の位置を割り出して、攻撃を仕掛けてきているという話になる。彼は再び、湖に近づいていく。今度は無意味と知りながらも、警戒しながら水海に近づいた。水面が見えるくらいに近づく。水面には魚影は映っていないように見えた。しかし、すぐに黒い影が出現した。しかし、水にいるときに飛んでくるとわかれば、対処は可能だった。飛んできてから気が付いても遅いが、水の中から出てくるとわかっていれば、対処できることをここで知る。彼はその場所から飛びのいて、森の方へと全力疾走する。魔法を唱えたところで、魔法が完成するまでに相手が自分の方に到達してしまうと予想できた。だから、彼は逃げるという選択肢をと取っているのだ。逃げる彼の背中に五匹ほどの魚が飛んできていた。しかし、背中に真っすぐ飛んできているわけではなく、角度をつけて飛んできていた。その生で、森の中に一直線の中に入っても、背中から噛みつかれるということはなかった。彼の後ろで魚がぴちぴちと跳ねていた。五匹の内一匹は打ちどころが悪かったのか、地面に激突すると動かなくなった。尾びれがけいれんして、プルプルと動いているが、それは生きている状態では怒らないことだろう。体の方はピクリとも動かないのだから、そこで絶命していると考えるべきだろう。
森の中に戻ってきた彼は、自分に魚がくっついていないため、相手が簡単に奇襲をかけることができないのだと理解した。つまりは、再び噛みつかれれば、森の中から出ることができないということになるだろう。彼の後ろに魚の列ができていて、生きているものはぴちぴちと体を動かして、水の中に戻っていく。
すぐに突っ込んでこないことがわかれば、対処にしようはあるということだ。水面が見える程度のところまで移動することができるため、そこで土の壁を作り、何かの魔法で水中で魚を一網打尽にできる方法があるかもしれない。水を利用するとなれば、電気を通せば水の中にいる魚は全て倒すことができるだろう。だが、手元に電気が発生しているものは一つもない。魔法で電気を作る方法もわからないのだ。火、水、風、土を多少応用したものは作ることができるが、それ以外の物質も魔法で作成できるのだろうが、四つの属性から、他のものに変わる過程が全く想像できない。魔法はイメージで作ることができるということは、反対にその過程が想像できなければ、対象の魔法を発動することはできないのだ。
風の魔法を水の中に入れて、水中の中でバラバラに捌くくらいしか思いつかないあ。水の中で火の魔法を発動して、強い効果が表れるというのは想像できず、水の魔法には水中で一網打尽にする魔法は思いつかない。土の魔法も水中では水に邪魔されてあまり威力は出ないだろう。消去法で風の魔法を使うしかない。しかし、捌くとなれば、水中の魚のいる場所を正確に見つけなければいけない。風の刃を使うとなれば、広い範囲を斬るということはできないだろう。風の刃を集めて、球体を作り、それに触れたものを刻むということはできるかもしれない。
彼はとりあえず、風の刃をまとめた球体で魚を一網打尽にしようと森の中から出て湖に近づいていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます