3-4 冷たい洞窟 4
盾をぶつけて、彼は前に進む。彼が投げる盾を壊すために、相手は腕を振る。爪が大きいせいで、相手の動きが爪に引っ張られる。そのせいで、相手は前に勧めない。そして、大きな爪の片方を振っているときは、もう片方の動きはどうしても鈍ってしまっているのを彼は見逃さなかった。そのまま、彼は盾を生成して相手に投げながら、相手に近づいていく。相手の爪がギリギリ当たらない場所まで移動すると、彼はそこで止まった。その位置から前に出れば、相手の爪に当たるだろう。盾を投げるのをやめても、相手の爪が自分の体を引き裂くのはわかっていた。だから、彼は盾を作りながらも、それ以上相手に近づけない。
「土よ。ロックピラー」
彼の足元から、四角い柱が、出現する。彼はその柱の天辺に乗っていた。相手の腕の可動域は、前面だけであり、上には向けることができない。彼は相手の頭上を通り、相手の後ろに着地した。彼の動きに合わせて、相手も体を回転させようとしているが、寸胴のせいで、その動作は緩慢だ。彼は相手が自分の方に向く前に、包丁を突き刺した。相手の背中に二本目の包丁が突き刺さる。かrは再び土の柱を出現させて、宙に逃げる。彼の作った柱は、相手の爪によって破壊された。足場が崩れることは想定して、彼は三本目の包丁を創り出していた。空中から相手の頭めがけて、包丁を振り下ろす。包丁の先端が相手の頭であるはずの場所に突き刺さった。相手の頭を足でけり、相手から離れた位置で着地する。相手は、頭に突き刺された包丁に悶えているのか、相手は暴れている。爪をやたらと振り回しているが、彼にその爪をぶつけようとしているわけではないようだった。しばらく、相手が暴れているのを彼は見ているだけだった。やがて、相手の動きが鈍くなっていき、最後には前のめりに倒れた。巨体が地面にぶつかったせいで、辺りに揺れが広がる。だが、それも一瞬のことで、彼は穴から脱出して、洞窟の先に進む。
また辛くも勝利したわけだが、これから先も同じように、敵が出てくるのであれば、いつか体力がなくなって、疲れ切ってしまうだろう。戦闘中にそんなことになれば、この場所で死んでしまう。やはり、何度考えても、こんな場所で死ぬのはごめんだ。彼は冷たい洞窟をさらに進んでいく。
そろそろかなり疲れも溜まってきている。食料もなく、寝床もない。どこかしらで休まなければ、次の戦闘で負ける可能性すらある。そう思いながらも、彼は足を止めることはなかった。そして、彼が歩き続けたおかげで、洞窟の先に、円形の蓋が壁についているのが見えた。蓋にはハンドルが付いていた。彼はそのハンドルを適当に回すと、蓋が重みで勝手に開いた。中がどうなっているのかわからなかったが、疲れもあり、彼は無警戒に蓋の向こうにあった部屋に入った。
そこには白壁で囲まれた部屋があった。彼がこの迷宮城に来た時にいた部屋とは別の部屋であることはわかる。白い部屋ではあるが、真っ白い壁というわけではなく、少し暗い色だった。その部屋の中には、使用感のあるベッドが置いてあった。綺麗にセットされてはいるが、既に誰かが使っていたもののように感じる見た目だ。今の彼にはそんなこと気にすることはできず、とりあえず、ベッドに寝転がった。そこで疲れが全身に広がるような感覚があり、全身が重くなっていく。脳みそが働くのをやめて、睡眠を取ろうとしていた。瞼が徐々に重くなり、彼は意識を手放した。
彼の休んでいる部屋は安全な部屋でそこには魔獣は出現しないし、中にも入ってこない。しかし、入れないのは魔獣だけで、もしそれ以外の者が侵入しようとすれば、その手段は多くある。この迷宮城の構造を熟知しているものならなおさら、簡単に侵入できただろう。
「この人が今回の挑戦者? 中々いい面構えだネ」
彼を化け物から助けた美少女とはまた違う少女がそこにいた。少女は眠っている顔を覗き込んで、そんなことを言っている。少女は彼の眠っているベッドの横にしゃがみこんで、部屋の隅を見る。特にそこに何かあるわけではないが、ただ彼が起きるまではそばに居ようと考えていたのだ。絶対に安全なように作っていも、予想外というのは起きる可能性がある。そのための備えだ。彼が起きていれば、彼の意思で挑戦することができるかもしれないが、眠っていれば話は別だ。眠っている間に、朝鮮失敗なんてことは、迷宮城に住む者たちにとってもつまらない結果になってしまう。彼女たちが見たいのは、挑戦者が自らの意思の強さを発揮したり、知恵を使ったりして、危機や試練を越えていくような、そんなドラマティックなシーンなのだ。
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