3-5 冷たい洞窟 5

 明途が目を覚ましそうとするときには、彼を守っていた少女はいなくなっていた。彼の中ではずっと一人であると思っていた。


 彼が体を軽く動かすと、体から疲れが抜けているのがわかった。完全に抜けているというわけではないが、しばらくは眠らなくとも大丈夫だろう。しかし、不思議と腹は減っていない。最初の大広間で適当に果物のようなものを食べたときから、一つも食料を口にしていない。それでも腹が減っていない理由はわからないが、餓死するというわけでもなさそうだった。彼あhこの部屋に入ってきた扉以外の扉を探す。しかし、シンプルな部屋であるだけに、扉を見つけることはできなかった。床にカーペットが敷かれているわけでもないのだ。やはり、洞窟を進むことでしか先に進むことはできないのだと考えて、彼は部屋から出た。洞窟に戻り、彼は前に進むことにした。相変わらず、曲がり角が多く、その先があ見えにくいというのはかなり不安がある。終わりも見えないことも、その感覚に拍車をかけているだろう。それでも、彼は前に進むしかなかった。


 しばらく進むと、彼の視界には、光が見えてきていた。かなり遠くにあるようだが、何か明りがあるのか、それとも外か。とにかく、明るい場所がそこにあった。彼は罠かもしれないと思いながらも、光に近づく足は速くなる。彼は周りを警戒しながら、その光に近づいていく。光は徐々に大きくなり、洞窟の中も見やすくなっていく。結局、彼の警戒は無意味に終わった。ようやく、洞窟も終わる。洞窟の外には川があった。外に出て周りを見れば、両側には高い壁があり、そこが谷であることがすぐにわかった。体力や筋力的に、その崖を登ることは無理であり、魔法を使ったところで崖の上まではいけないだろう。彼はまだ建物の中に戻れないのかと思いながらも、谷を進むしかないと考えていた。しかし、洞窟のような一本道ではなく、左右のどちらにも進むことができるだろうし、途中で分かれ道も出てくるかもしれない。しかし、川の流れは一定で、川が流れる方向に進めば、海が出てくるだろう。そうすれば、谷以外の陸地に出ることができるかもしれない。


「いや、ここは建物の中なんだよな。ほんと、意味がわからないな」


 彼は天を見上げる。森のあったエリアと同じように太陽は常に彼の真上にあり、地上を照らしている。まぶしいというわけでもなく、単純に周りを照らすにはちょうどいい光だ。ここが建物の中だということに違和感を覚えながら、彼は川の流れと同じ方向に歩き出した。


 海は思ったよりもすぐそこにあった。洞窟を歩いてきた時間よりも短い時間で、河口に着いてしまった。川の中の水は海の方に流れていた。しかし、谷を作る左右の高い壁はそのままで、陸地に上がることはできないようだった。彼は潔く諦めて、川を上る方向に移動することにした。


 川の近くであるためか、周りは石で構成されていて、かなり歩きにくい。そのまま、彼は歩き続けていた。途中に小型の動物のようなものが彼に攻撃してきたのだが、彼はそれを簡単に包丁で切り裂いて倒していた。もう、小型の魔物では苦戦しなかった。魔法はある程度使えるようになっていて、包丁や盾と組み合わせて、戦闘に役立てていた。単純な魔法ではあるが、それで十分に戦うことができていた。


 しばらく歩くと、そこには小屋があった。小屋には窓が付いていて、彼は窓から中を覗き込んだ。中にはテーブルに椅子があり、休憩できそうな内装だった。壁もしっかりとした木を使っていて、そう簡単に化け物たちが入ってくることはできなさそうだった。彼は小屋の扉を開けて、中に入る。彼が中に入ると、小屋の中の埃が舞う。誰も使っていなかったため、中はかなり埃っぽい。彼は窓を開けて、換気しようとしたのだが、窓は開くことができるものではなかったため、窓を開けることはできなかった。彼は小屋の扉を開けて、風の魔法を使って、換気していた。中の埃を吸わないように、ドアの外から魔法を使って中の空気を新鮮なものにしていく。それと同時に中の埃を外に出していく。しばらく、その作業をしていると、小屋の中の空気も綺麗になった気がした。少なくとも、埃っぽさはなくなっている。


 綺麗になった小屋を改めてみれば、施設がかなり整っていると言えるだろう。調理台にはコンロが二口。蛇口のついたシンクがあり、小さなハンドルを捻れば、水が出てくることを確認した。調理台付近の棚を開けば、そこには調理道具が並んでいる。これらにも、多少誇りがかぶっているが、埃を拭けば使えそうだ。調理台は使えるのだが、それ以外には椅子とテーブルしかない。テーブルも一人で使うようなサイズだ。小屋の壁にはドアが二つ付いていて、その扉を開けば、トイレと風呂があった。もう一つは寝室だ。この小屋は、この場所で生活できるような設備が整っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る