わたしと読書

明日のフリル ​​─────── 松澤くれは

服の話をしよう。わたしにとって服とは、自分を示すいちばん身近な表現だ。服はその人を表す。同じ服でも、着る人が変われば服は変わる。服は着る人を吸収して、その人だけの輝きを魅せる。関係の無い話だが、私は靴下がおしゃれな人が真のおしゃれだと思っている。靴と裾の隙間からちらっと見えるその一瞬のために気を配れるのは、なんか粋だと思う。その繊細さとゆとりに憧れる。

無限の可能性を持つ服。その輝きを見れるのが、この小説だ。主人公の五福あやめは、有名ブランド【フラットフラワー】(通称フラフラ)で働く販売員である。まず主人公の気質が好き。彼女のパワーは服の持つパワーに似ている。自分も周りも巻き込んで放たれる輝きや、物語の中で個性的なキャラに囲まれながらも、しっかりと自分の色を出しているその姿は、吸い込まれそうなほど魅力的だ。服を選ぶときのわくわく、そして描かれる服のデザインの大胆さ。それと対照的に記される、繊細な手作業、静かに響くミシンの音。ひとつひとつに服の魅力と、その中に詰められたデザイナーの静かな炎を見られる作品である。

思わず引き込まれる世界観は、この本が持つものでもあるが、何より【服】が持つ輝きではないだろうか。

美しい服の縫い目から見える繊細な物語が、素敵な本だった。

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