第2話
(寒い…)
もう、辺りは既に暗い。しかし、政子は勘であのボロ屋の場所が分かった。
(…冷たい…早く…頼朝様に…会いたい…)
息も切れてきた時、頼朝の屋敷の明かりが見えてきた。
(…やっと…会え…る…頼朝…様…に…)
安心して気が緩んだのか、政子は玄関の目の前で倒れてしまった。
「…さこ、政子っ…」
気がつくと、心配そうな頼朝の顔が見えた。
「大丈夫か?」
「はい…ご迷惑をかけて、申し訳ございません…」
「大丈夫だ。それより、体調の方はどうだ?」
「平気です」
「良かった」
そして、頼朝と政子は結婚しようとした。が、それに時政は反対。
「私の可愛い娘も、流刑人なんかに渡せるかっ…」
そこで、時政は無理にでも政略結婚させようとした。
しかし「頼朝への愛」は「父への愛」を遥かに超えた。
(あんな野郎となんて…ごめんだわ)
そして、政子と頼朝は正式に結婚。治承元年のことである。
(チッ)
一年後。政子は一人の女児を出産。大姫(一幡とも)と名付けられた。
(大姫には申し訳無いけど、男児なら良かったのに…)
しかしその2年後、以仁王が平氏打倒を呼びかけた。
頼朝は人をあまり信用しない人なので、初めは行こうと思わなかった。
しかし計画がバレ以仁王が亡くなった。平氏は恐らく呼びかけた者は全員倒すはずなので、頼朝は出陣せざるを得なかった。
「頼朝様、生きて帰ってきてくださいよ?」
「ああ。当たり前だ」
(頼朝様が無事に帰って来ますように…)
しかし、石橋山の戦いでは惨敗。
(そんな…頼朝様は無事かしら…)
しかし、頼朝はその後富士川の戦いで勝利。二人は鎌倉へ移り住んだ。その後、木曽(源)義仲や源義経等の反対勢力を消し去った。
その義経の側室であり愛人、静御前は白拍子。
頼朝は幕府の繁栄を願う歌を舞う様命じた。
しかし。
「しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな」
「吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞ恋しき」
両方とも簡単に言えば『義経様に会いたい』という歌だ。
「…何なんだ、この歌は…今すぐやめさせ-」
「その必要はございませぬ」
立ち上がったのは政子だった。
「政子!?」
(…私があの夜、貴方に会いたくて家まで駆け込んだ時…)
思った事を伝えると、頼朝は渋々納得してくれた。
そして静御前は許されたが、身籠った子は海に沈められた。
そしてついに頼朝は征夷大将軍となる。鎌倉幕府誕生である。
その後、政子は二人目の子を身籠った。
その時、頼朝は亀の前という女性を近くに呼び寄せ、愛した。
(何よ、あんた…正室の私よりも頼朝様に愛されてるじゃない…)
政子は嫉妬して、なんと亀の前の家を破壊してしまった。
そのニュースは頼朝の耳にすぐ入った。
(は…!?)
それから、頼朝は悟った。側室は持てない、と。
そして、政子の知る限りでは、頼朝は他の女に浮気しようとはしなかった。
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