御台様

額田兼続

鎌倉幕府

初代将軍頼朝御台、北条政子

第1話

保元2年(1157年)。伊豆国で、一人の女の子が生まれた。

北条政子の誕生である。

彼女の父は北条時政。母は不明である。


彼女が4歳の時、一人の少年が流されて来て、父・時政はその少年の監視役となった。それが源頼朝である。

「父上、頼朝殿は、どうして流刑となったのですか?」

政子が聞くと、

「頼朝は、清盛様と敵対した相手、源義朝の子。それに、頼朝本人も戦に出ている。清盛様は殺そうと思ったが、継母の池禅尼様により、特別に許され、流されたそうだ」

「そうなんですね…」

正直言って、政子はよく分からなかった。だけど、頼朝殿は敵だ。私もしっかり監視しないと。そう政子は思っていた。


ある時、時政が京へ行っている時。

政子は頼朝に一度会ってみたくて、朝早くにこっそり家を出た。

(頼朝殿は、どういう方なのかしら…)

しばらく歩いていると、着いた。少し、ボロ屋を覗いて見ると、青年が居た。

(かっこいい…)

惚れて、しばらく見つめていると、

「?何か用か?」

バレた。

「い、いえ、何でもありませぬ」

「そうか。ところで、貴女の名はなんだ?」

「北条政子と言います」

「政子か…良い名だな」

「ありがとうございます」

……………

それから時間が経ち、日が沈み夜になっていた。

「あっ、もうこんな時間…」

「この家は壊れているし、寒いかも知れぬが、ここで止まって行くか?」

頼朝が微笑みながら言った。

「あ、はい。じゃあそうします」


翌朝。政子は帰った。しかしその翌日、政子はまた頼朝の元へ行った。そのまた次の日も…と、ほぼ毎日頼朝の元へ通い続けた。

そして、二人は仲が良くなり、やがて少しずつ恋をした。


数年後。時政の耳にも、その情報が入った。

(…政子が頼朝と交流していることは本当だったのか…あんな罪人と結婚など絶対せぬ様、先に婚約させておくか…)

そして、政子は政略結婚させられる事になった。

それも、やがて政子の耳に。

(いやだ、政略結婚なんて…)

そう思った政子は、結婚式の夜、逃げ出す事にした。

しかし、土砂降りの雨が降っている。

(もう、こんな時に限って…)

しかし、今にでも逃げないと結婚させられる。それだけは絶対避けたい。

(…よし)

覚悟を決めた政子は、雨の中走り出した。

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