第31話 【陽奈】残り香
今日は一日仕事が全然手につかなかった。
一瞬でも気を抜くと、頭の中がコータのことでいっぱいになってしまって。
ようやく家にたどりついた私は、大きく息を吐き出し、ジャケットとブラウスを脱いだ。
昨日の夜のホテルの、ホワイトムスクみたいなシャンプーの香りがふわっとあたりに広がった。
あの日、あの雨はずっとやまなくて、私たちは通り道にあったラブホで雨宿りをした。
いつも優しい声で私の名前を呼び、のんびり穏やかに絵を描いて、余裕のある態度で私をからかって楽しんでいたように見えていたコータが
あんなに独占欲が強くて
やきもちやきで
寂しがりやで
強引で
俺様なところがあるなんて
正直びっくりした。
車の中でもたっぷりしたのに、ホテルについた瞬間から、コータは私の身体を壁におしつけ、激しくキスをした。
結局日曜の夜まで私たちはずっと一緒に過ごして、街中に戻ってきてディナーのあと、またホテルで抱き合った。
ずっと彼女がいなかったんだろうか。
コータとしたかったし、彼女になりたかったんだけど、普段のイメージとのギャップが激しすぎて私は若干戸惑っていた。
鏡の中に映る下着姿の私の首筋には、キスマークがいくつもつけられていて、今日私は、これを隠すために、暑い中わざわざタートルネックを着て行って、めぐに怪しまれてしまった。
コータ。
私はいなくならないよ。
そんなにあせって必死に私を捕まえなくても
大丈夫
ゆっくり、幸せを築いて行けばいいんだよ。
そんなセリフをコータにかけてあげられればよかったのかもしれない。
でも、8歳も年上のコータにそんなこと偉そうに言えるほど、まだ私は大人じゃない。
気まぐれなコータからは今日は何の連絡もこないけど、きっと私のことで頭がいっぱいのはずだ。こっちから連絡しないで焦らして妬かせようかと思ったけど、可哀想だからやめて、安心させてあげよう。
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コータ、週末はいっぱいエッチしちゃったね♪笑
コータはすごい奥手なタイプだと思ってたから、意外だった!笑
今日会社で、キスマーク隠すの大変だったんだからね!!(`∧´)笑
週末も、ずっと2人で一緒にいたいな。
大好きだよ。
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ひな〜。お疲れ。
ひなのメールで癒されたわ。
まだ、残業でだいぶかかりそうだけど頑張るわ。
なんで隠すんだよー。俺の女ですって宣言していいよ。別に付き合ってるってバレてもいいし。
週末、リリースが近いから、休めるかわかんないけど、ひなと会いたいから、早く終わらせるように頑張るわ!
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俺も大好き!とか軽々しく言わないけど、コータが私を好きで好きでたまらないのが伝わってきて、嬉しくなった。
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