第30話 【奏多】情報屋
「奏多さ〜ん!こっちこっち〜」
めぐが俺を手招きする。
山本主任が休暇をとっており、今日の俺は久々にフリーだ。
「めぐ、秋山さん、久々〜!」
豚丼を片手に、古びた丸椅子に腰掛けた。
「奏多さん、山本さんとラブラブみたいじゃないですか」
めぐは早速、ニヤニヤしながら切り出した。
「いやぁ、そーゆーのじゃないんだけどね、なんか話広まっちゃって、困ってるよ。」
俺は目を泳がせながら答える。
「え、まだ付き合ってないんですか?」
「別に、そーゆーのじゃないし。。ただの上司だよ。。」
「ふーん。。。」
めぐは何かいいたげな顔で俺を見た。
「それより、歓迎会のあと、なんかこっそりひなと出ていったって聞きましたよ。」
「え、、、!!??!、、い、いや、別にこっそりというか、か、神山部長もね!!!!!部長もいたんだよ!!!3人でダーツバーで遊んだんだよね。」
俺は変な汗をかきはじめた。
めぐはラーメンをすすりながら、驚いたような様子もなく「あぁ、部長、ダーツ好きですもんね。いつもとテンション違くてびっくりしませんでした?」
「‥‥え、あぁ、まぁ。。。」
なんでめぐは社内のことをなんでもかんでも知っているんだろう。
神山部長のダーツ好きなんて、めぐより社歴の長い俺ですら聞いたことがない。俺たちが最初の発見者だと思っていた神山部長の本性まで知っているなんて。
おれは少しめぐが怖くなった。
一体何を、誰から聞いて、どこまで知って、俺に話しかけているんだろう。
俺がほんとは主任のこと少し気になり始めてしまったことも、めぐといたらすぐに見透かされてしまいそうで、俺はぶるっと身震いした。
「俺そういえば昼から会議だったから、戻るわ。」
そう言って俺は豚丼を早食いし、ビルへ戻った。
最近、昼休憩から戻ると、だいたい主任から用事を頼まれていたから、ついつい主任のデスクのほうを見る。
あ、そうか、今日は休みだったんだっけ。
さっきは、あの場から一刻も早く立ち去るために会議とか言ったが、会議なんて本当はない。
‥‥なんか、暇だな。。。
主任からの頼まれごとで多忙を極めていた俺は、急に手が空いた感じがして、仕事をもらいにいった。
「仲村さん、なんかやることないですか?」
「え、急にどしたの。特にないけど。。。あ、奏多お前、今日山本さんいないから、やることないのか。笑」
周囲からクスクスと小声で笑いが起こる。
「いや、別にそーゆーわけじゃ、、、ちょうど今、プロジェクトも落ち着いてきたんで。」
同じフロアのメンバーも今は作業が落ち着いており、特に仕事を得られなかった。
これでは山本主任がいないと、俺はなにもできないみたいじゃないか。
なんだか虚しくなって、ひなにチャットを送った。
---------------------------------------------------------------
◯藤原奏多
ひな、この前はダーツバー楽しかったね。
日曜日、暇だったら飲みにいかない?この前、他にいってみたかった店に連れて行きたくて。
---------------------------------------------------------------
俺は画面の前で待機した。
数分後、ひなの名前がポップアップされた。
---------------------------------------------------------------
◯沢崎陽奈
こんにちは!この前は、ほんとに爆笑でしたね!
ごめんなさい、日曜日はちょっと予定があって(>人<;)
また今度神山部長も一緒にダーツバーいきたいですね♪
---------------------------------------------------------------
‥‥撃沈。
なんで神山部長も一緒になんだよ。
はーぁ。脈なしかな。
俺はやる気を無くして、コンビニに買い物にいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます