第32話 【幸太】可愛いヤツ

11時。残業帰りに近くの立ち飲みバーで一杯飲んでいたら晴翔がやってきた。


「コータさん、お疲れ様っす!」


「おー晴翔!まだ残ってたんだな、お疲れ。」


ちょうど横が空いていたので晴翔は隣に座った。


「この前、話聞きますとかいって、美波さんきちゃったから聞けてなかったじゃないすか。外からコータさん見えたから寄っちゃいましたよ。飲みましょー。」



そんなことよく覚えてたな。相変わらず可愛いやつだ。



「あれ、なんか今日コータさんいつもと雰囲気ちがくないっすか?髪型とか、、、あ、香水とか変えました??」



「いや、別に?」

勘の鋭い晴翔。何かを察知したのだろう。



不思議そうな顔をして晴翔は俺の右手にちらっと目をやった。


「あ、コータさん、彼女できたんすね〜!!!!」

昨日ひなとお揃いで選んだペアリングに気づいたのか、晴翔はとても嬉しそうに無邪気に笑った。



「え?うん、まあね。。。」

初日の数分で気づくとは、さすが手間暇かけて育てた晴翔は違うな。

色々嬉しくなって口元が緩んだ。



「マジっすか!!!おめでとうございます!!やったじゃないすか!!!で、どこで出会ったんすか」


会社、、、と晴翔には本当のことを言ってしまおうか迷ったけど、ひなは隠したがってたから、もう少し黙っておくか。うちの会社は噂広まるの早いから、どうせじきにばれるだろうし。


「ちょっとね。秘密。笑」


「えー!いいなあ!今度俺にも紹介してくださいよ!」



「そのうちね。」

悪いが絶対しねぇよ、お前には。笑



「どんな人なんすか?年下っすか?」


「うん、すげー一途でエロくて可愛いの。俺のこと大好きな感じだし。」



「で、いつヤったんすか〜!!???」

晴翔がニヤけてすり寄ってくる。



「先週。土日ずっと一緒だったから、何回も。笑」

あれこれ思い出してしまって、ニヤニヤが止まらない。



晴翔はそんな俺を見て不服そうに言った。

「いいなあー。ズルいっすよ。俺なんて、この前、途中で拒否られちゃって。」



「また新しい女かよ!!ほんとにこりねーな。」



「違うんすよ。すげー見た目がタイプで、俺の料理も喜んでくれて、なんか心を許してくれてる感じで、マジでいいなって思ってるんすよ。でもなんかわかんないけど、してる途中で泣かれちゃって。嫌われてるわけじゃなさそうだったから、また誘ってみますけどね〜。」



「ほんとモテんな、晴翔。俺もお前くらいイケメンだったらなあ。」



「コータさんもイケメンっすよ!」

晴翔は親指を立てて、真顔でグッドサインをする。



「ありがと、晴翔。そんな事いってくれるのもうお前くらいだわ。俺ももう、オッサンだからなあ。もっと若かったらなぁ〜。」


「なんで自信なくしちゃってんすか!彼女できたんすよね?もっと堂々としてくださいよ!!愛されてるんすから!!!」





‥‥愛されてる‥‥






嬉しい言葉を言ってくれるじゃないか。

「マスター、こいつにビール持ってきて。」

俺は可愛い後輩にビールを奢った。




「あざーっす!!」

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