第24話 【陽奈】本能には逆らえない
4人ずつに分かれた対抗戦は、めぐチームの勝ちだった。
そして、LINE交換とジュースを賭けたハルトと私の戦いは、ハルトの勝ちとなった。
昼からめぐが予定があるようで、現地解散となった。
「負けちゃったや。ハルト、ずるいよ。100点いかないとかいって、180点も出すなんて」
「こんな点数、俺も初めてっすよ!ひなさんとLINE交換したくて頑張っちゃいましたよ〜!さっ、交換〜!」
ハルトはニコニコの笑顔でQRコードを表示した。女慣れしている感じだけど、なんか可愛い。
「ハルトのあの怒涛のストライクはすごかったな。男の俺でも惚れるわ。。あっ、俺、家こっちだから、じゃあな!!」
下山さんはニヤッとして、信号のところで右へ曲がった。
「ひなさん、俺たちいつのまにか、2人きりっすね。なんか食べないっすか?スープカレーとか」
「いいね!私もお腹すいた。食べに行こう!」
「マジっすか!俺んち、ここからすぐなんすよ!俺、スープカレー作るんで、うちきてくださいよ!」
「えっ、!?スープカレーを作るの???!ハルトが?」
「そっ。俺、料理好きなんすよ〜!」
ハルトは歯を見せてニカっと笑うと、私に腕を絡めてスーパーに入った。
カートをおしながら、ハルトは慣れた手つきで食材を選び始めた。
「具材は何がいいすか?」
「え、、、っとあの、、、」
どうしよう。
勢いにおされて流れでついてきてしまった。
いやいや、年下とはいえ、相手は会社イチのイケメン。何をためらう必要があるんだろうか。
コータさんのことが頭をよぎるが、別に告られたわけでもないし、まだ付き合ってるわけでもない。
しかも、料理得意とか、家事の苦手な私には最高じゃないか。
行って、スープカレーを食べて、帰ればいい。
いや、でもこの男、それだけで済む???。。。。
葛藤する私をよそに、ハルトははやくも会計を済ませてしまった。
「ひなさん、おれの手料理、楽しみにしててください!」
タメ口でいいよといいながら、自分はちゃんとさんづけで呼ぶ。全ての語尾に、ハートマークがついているかのような可愛い口調。
仔犬のように懐っこいハルトに、私はドキドキしはじめた。
新築みたいに綺麗なマンションの2階にハルトの部屋はあった。
「すっごい綺麗だね!!」
「でしょ?去年新築で引っ越してきたんすよ〜。1Lだから、一緒に住めますよ??」
本気で言ってるのか、年上をからかっているのかよくわからなく、返事に困った。
部屋に入るとハルトは、私に紅茶とお菓子とおしぼりを出して、手際よく料理を始めた。
私より若いのに、気が利くしっかりした子だなあ。
ボーリングの疲れでウトウトしていたら、ハルトに呼ばれた。
「ひなさん、これ持ってってください。」
「うわ!ごめん寝ちゃってた!?、、、えっ、これ本当にハルトが作ったの!?!?」
「そーっすよ!おいしそうでしょ♪」
茄子やいもやにんじん、ゴロゴロとした野菜が色鮮やかにスープに浸かっている。
私はパセリのかかったライスを受け取った。
「このパセリも、自家製なんすよ!」
台所のほうに目をやると、小窓の横に鉢植えが並び、奥には大きな観葉植物が置いてある。
「ハルトくん、君はなんてオシャレなの!」
私は少し興奮気味に応えた。
ハルトのおいしい手料理を食べ終え、おなかいっぱいになった私は、日当たりの良いハルトのおしゃれな部屋で、テレビを見ながらすっかりまったりしていた。
「あっ、ハルト、なんかすごいくつろいじゃった。今日はありがとう!そろそろ帰るね。」
「えっ!!なんで帰るの!???泊まってけばいいじゃん。」
当たり前のように泊まりを提案するハルトに私はタジタジになった。
「え!!??い、いや、だってお泊まりグッズとかもないし!??!?」
「やだ。帰んないで。」
ニコニコの笑顔が消え、泣きながら怒っている子どもみたいな表情をしたハルトが、ソファーから立ち上がろうとする私の手を引いて自分の方に引き寄せた。
バランスを崩した私はそのままソファーに深く倒れ込んだ。
ハルトは後ろから私の胸を抱くと、首筋を伝うように何度もキスをした。
「ま!待ってハルト!!」
「なんで?待てないよ。」
ハルトは私の顎をくいっと引っ張り、私の唇をふさぐようにキスをした。
「んっ‥」
体では嫌がるようにハルトを押して抵抗してみたものの、唇は本能に逆らえなかった。
私たちは、互いの吐息を確かめながら、何度も唇を重ね合わせた。
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