第25話 【幸太】何も知らない2人
月曜日。コーヒーを片手に喫煙所でタバコを吸っていたら、晴翔が入ってきた。
「あ!コータさん!」
俺を見つけてハルトは嬉しそうに笑った。
「おー、晴翔。なんか、いつもにも増して楽しそうだな。」
「そーっすか、いつも楽しいっすよ!」
悩みがなさそうで幸せな奴だ。
俺は昨日、歓迎会のあとお前とひながふたりともいなかったのを思い出して、まさかと気が気じゃなかったんだがな。
一呼吸おいて、晴れない疑念の煙を晴翔の方向にふきかけた。
「晴翔さ、歓迎会のあとすぐいなくなってたけど、あのあとどっか行ったの?」
「え?あぁ、高校の友達の結婚式の二次会に呼ばれてたんすよ。で!!会場が!前、コータさん達と合コンやったときに使った、ダイナーズバーだったんすよ!めちゃ懐かしくないっすか??笑」
「あぁ、そんなこともあったな。」
とりあえず、別のグループで晴翔と陽奈が二次会に行っていた可能性がなくなって安堵した。
コイツは嘘がつけないから、今の話は真実だろう。無駄にリアリティもあるし。
でもじゃあ、ひなはどこにいってたんだろう。
ひなに会えない日が続くと気が気じゃない。
「コータさん、なんか最近元気ないっすね。どしたんすか?俺でよければ、話ききますよ。」
人たらしの晴翔は、本当によく色んなことに気がつく。ついつい、コイツにはみんな心を開いてしまう。
「ん?あぁ、なんか俺さ、、、」
喋りかけたその時、喫煙所に美波が入ってきた。
「あっ、じゃあ、お先失礼します!」
事情を知っているハルトは、気を遣って先に出て行った。
美波と喫煙所で会うのは別れてから久々だ。
しかも、2人きりになってしまい、かなり気まずい。まあ、晴翔がいてもそれはそれで気まずいんだが。
そそくさと部屋を出ようとタバコを潰す俺に、珍しく美波が声を掛けてきた。
「幸太、新人の若い子狙ってるらしいじゃん?」
三白眼の美波が、最上級に不愉快そうな声と顔で、俺に睨みをきかせている。
マジ怖えぇ〜。
「はぁ?誰情報だよ。狙ってねーし」
「嘘つけ。あたし、めぐから聞いたんだから。」
めぐ!!!!!あの野郎!!!!
湧き上がる怒りを抑えて俺は冷静に対応した。
「何もねーよ。そもそも俺らもう別れてからだいぶ経ってんのに、なんで今更キレられなきゃなんないの?」
「社内の女なら誰でもよかったんだって思ったら、マジムカついてきて。」
「なんなんだよ。振ったのはお前のほうだろ」
「それは、アンタが仕事仕事で全然構ってくんなかったからじゃん。元カノが職場にいるんだから、少しは気ぃ使えっつーの」
"具合が悪い時期"なのか、寝不足なのか、いつもにも増して美波の目の下のクマがひどい。
美波はいったん鬱モードに入るといつもこんな感じだった。めんどくさいこと極まりない。
俺は一息ふぅと煙をはいて、喫煙所をあとにした。
はぁ。癒されたい。
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