第3話初めての薬草採取

昨日はお弁当を食べ、部屋に入るとそこは結構広めの部屋でソファやテーブル何かも置かれているオシャレな部屋だった。

だが、昨日は疲れており、ゆっくりルームツアーをする事無く、お風呂に早々に入り、ベッドに横になった途端寝てしまった。

朝目を覚ますと、こちらの服に着替える。

そして部屋を出ると


「おはようございます」


「おはよう」


ユキちゃんも同じタイミングで部屋から出て来ており、二人して大きな欠伸をしてからの朝食となった。

部屋で食べても良かったが今は何故か人と一緒に食べたい気分だったのでユキちゃんと一緒に折りたたみテーブルを広げての朝食。


「あら今日はパンなのね、」


「はい、朝は基本パンなんですよ、リキさんは朝からしっかり派なんですね」


「日本人たるものお米とお味噌汁はマストよ、それに納豆は必要なタンパク質だしね、それにしてもまさか夢の中で魔法の使い方を教えられるとは思わなかったわ、まぁお蔭で直ぐに覚えられたけれど、これで色々出来るわね」


そう、私達は夢の中でえいちゃんから知識を貰い、使い方や魔力の操作を教えられた。

身体もその記憶が残る様で目が覚めた瞬間から魔力を感じとることが出来た。

えいちゃんの指導は優しく、私達が分かるまでゆっくりと付き合ってくれた。


スキルを使い、朝食セットを二人で食べる。

そして今日は初めての依頼を受ける日。

昨日は夜になってもグルーダは来ず、あまりこちらに関わる気も無いようだ。

まぁ、押し付けられた厄介事等出来る限り見て見ぬふりをしたいのだろう。

ならばこちらも自由にやれば良いと割り切る。


「それにしても依頼はどうすれば良いのかしら?」


「受付の始まる時間が八時からだとえいちゃんが言っていたのでそれよりも余裕を持たせてギルドに行きましょう。それから依頼書選び受付に行き、初めて依頼を受ける事を言いましょう。今日は採取を主にした方が良いかと」


「そうね、あんまり気負わずに行きましょう」


そうして少し早い朝食を終え、身支度を済ませるとギルドへ向かう。

ギルドの前の道には木の葉が積もりあまり綺麗とは言えない。

その様子にリキは


「ユキちゃんちょっとこっちもお掃除しない?」


「そうですね、見栄えも悪いですし、ギルドの中も埃っぽかったのでそちらも掃除しましょう」


思う事は同じでリキは外をユキは中の掃除を始める。

箒で木の葉を集め、袋に詰めていく。

後で焼き芋でもしようと考えながら。

中もあまり綺麗ではなく、人が使っていない所は埃が積もっている。

そこも綺麗にしていき窓も拭く。

床に溜まった泥が固まったものも綺麗に取り除き、人が来る頃には見違える程では無いものの幾分か綺麗になったと分かるものになっていた。


「あれ?新人?」


「おはようございます、昨日ギルド登録をしたユキ・モリヒラと言います、今日は依頼を受けたいのですが、宜しいですか?」


「同じく昨日登録をしたリキ・ウチダです。よろしくお願いしますね!」


自己紹介をすると受付の人と思われる女性ははぁ、と曖昧な返事をしカウンターに入る。

そして


「新人が受けられる依頼はFランクのみで薬草採取が主、そこの依頼書が貼ってある掲示板から勝手に取って行って、終わったら依頼書と共に取った薬草を持ってきてくれれば鑑定するから」


と言うとさっさと雑誌の様な物を広げてしまった。

掃除され、綺麗になったフロアにも気付かず。

二人で目を合わせ掲示板に向かうと色々な採取依頼があり、そのうちの数枚を取ると出掛けて行く。

王都の外へは門を潜って行く。

兵士に依頼書を見せると門を通れるようになっていた。

朝日が登り朝の気持ちのいい風が吹く。

薬草を鑑定で探していると直ぐに依頼の物は見つかりものの一時間で全ての依頼を達成したのだった。


「これで今日の依頼は達成なのね、それにしても鑑定ってスキルは凄いわねぇ雑草にしか見えない薬草も見分けられるなんて、便利だわぁ」


「そうですね、しかもその薬草の状態も分かるのでどれが良いのかも選べますし、何処から切り取れば良いのか、どうやって抜けば良いのかまで分かるのは助かります」


「そうじゃな、もうすぐ昼食の時間じゃが二人ともまた出前にするか?」


「そうねぇ、少し余裕も出て来たしお料理して心を満たしたいからお部屋で何か作ろうかしら」


「そうですね、ならスーパー系の通販を見ましょう、出来ればリキさんも同じスキルがあれば個々で使えて便利なんですけどね」


「ふむ、スキル共有を試してみるか?」


「「スキル共有?」」


スキル共有とは互いの了承の元スキルを共有し相手にもスキルを同じ様に使う事が出来るものだそう。

ユキならば通販、リキならば筋肉となるだろう。

それを聞いた二人はお互いのスキルを共有。

そして二人は自分の部屋へと入っていった。




ユキside


 「さて、何を作りましょうか、」


こちらに飛ばされ筋骨隆々のオネェ、リキさんと共に掘っ立て小屋に押し込められ色々あった。

だが、元の世界にも戻れるか分からず、国からは手切れ金として二人で金貨100枚だけの支給。

一人はたったの50枚。

これは多いのか少ないのか、考えても仕方ないと割り切るにはあまりに重い現実。

だが、リキさんが居てえいちゃんが知識と部屋をくれて、無理をする必要は無いと言ってくれる。

それなら緩くやっていこうと思えた。

食事の時、誰かと一緒に食べれるだけでも良いと思えた。

だからこそ自分が持っている知識と力を使っていこう。

そう思いながら通販で食材を買っていく。


ホーム画面からスーパー系の通販を開き、蕎麦と豚肉、玉ねぎを買う。

それからホームセンターのページへ行きお鍋とキッチンツールとお椀を買った。

蕎麦とお肉と玉ねぎで値段は銅貨7枚程度。

お鍋とキッチンツールとお皿で銀貨3枚程度となった。


お鍋にお湯を沸かし蕎麦を茹でていく。

もうひとつのお鍋には水、お肉、玉ねぎを入れ豚肉の色が変わる頃に灰汁を取り麺つゆを入れる。

二つのお椀に茹で上がった蕎麦を入れ豚肉と玉ねぎの入った汁を入れて肉蕎麦の完成となった。


「リキさんの分も一応作っておきましょう。今日は少し肌寒いですから」


そう言ってお蕎麦をお盆に乗せ部屋を出た。




リキside


「さて、ユキちゃんはあまり食べる子では無いけれど一応ね、一応一緒に作っておきましょ、さて、お昼ご飯となるとおにぎりが良いかも知れないわねぇ、あんまり大きく作り過ぎないようにしながら、後好き嫌いの別れる食材も避けておいて、そうだわ、たぬきおにぎりだったら大丈夫かしら、なら、ご飯はレンチン出来るもので、天かす、後は葱と鰹節ね!」


レンジでご飯を温めている間に天かすと鰹節、葱をボウルに入れ、おにぎりメーカーの準備をする。

おにぎりメーカーを使う事で衛生面も安心な上大きくなり過ぎる事も無い。

一気に六個も作れるのも嬉しい。

スキル共有で通販が使える様になって初めての自炊。

なんて楽しいのだろう。


食に重きを置くことによって筋肉や自分の身体に向き合い、たまに悩みながらも共に歩んできた。

異世界でも、いや異世界だからこそ余計に身体との対話が必要になるだろう。

急な環境の変化に人はとても繊細に反応してしまう。

だからこそ食事、睡眠、そして筋肉。この三つを疎かにし、対話を怠れば直ぐに異常となって帰ってくるだろう。

そうならない様にする為に、そして私より弱いユキちゃんを守る為に今私に出来る事をする。

その為にはまず安心出来る食事。

今日は肌寒いし、何よりこっちの服はあまり着心地が良くない。

そういった些細な事かストレスになってしまう。

少しの変化も見逃さないように注意をしないとね。


レンジから取り出したご飯に天かすと鰹節、葱を加え、そこに麺つゆを入れしゃもじて混ぜ、おにぎりメーカーに詰めていく。

上から優しく押し、出来上がったおにぎりをそっとお皿にだして再び繰り返す。

そうして出来上がったおにぎりと卵焼きも焼き上げる。

しっかり焼かれた卵焼き。

それとお漬物もあったらときゅうりやナス、たくあん等もお皿にだし部屋を出た。




「「あっ」」


お互いが同時に部屋から出てくる。

魔法で開かれた扉から出た瞬間にお互いの持っているものを見て思わず笑みが溢れた。


「リキさんはおにぎりと卵焼きとお漬物ですか、」


「ユキちゃんはお蕎麦なのね、フフ」


二人が二人とも二人分の料理を作り、しかも両方ともセットにありそうなメニュー。

それを見て思わず笑う。

二人はすぐ近くの平坦な場所に腰を下ろしお互いの料理を交換する。


「今日は寒いからお蕎麦が染みるわぁ」


「寒いからこそおにぎりが染みますねぇ」


お互いの料理を頬張りながらゆっくりと景色を見ている。


口に広がるお蕎麦の味。

豚肉の油が溶けたつゆと玉ねぎの甘み。

それらが蕎麦と合わさり少し冷えた身体を温めていく。

優しく、だが、しっかりと形作られたおにぎりを一口食べれば、天かすのサクサク感と葱と鰹節の香りが鼻を抜ける。

麺つゆで味をつけられたご飯がほろりと解け噛む事に米の甘みが溢れてくる。

蕎麦のつゆをそこに加えるとさらに美味しくなり、卵焼きを食べれば優しい味の卵が優しく解けた。

そしてきゅうりの漬物。

いい塩梅の味とポリポリとした歯触りが心地よく感じる。


ゆっくりとした時間の流れと優しい秋風が吹き抜ける草原で美味しい昼食を二人は堪能していた。

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