第29話 つがいになられる前に始末する
「これでも――これでも紳士的に言っているつもりなんだぞ? オレたちの寿命は長い。気が変わるのを待っていた。今だって渇きを覚えているだろう? 人間の食事では腹は満たせない。今は淀みなんぞを食って空腹を誤魔化しているようだが……いずれそれに耐えかねて、いつか人を食うはずだ。……が」
じとりとおれを見る。
「別のオスが出て来たのなら話は別だ。つがいになられる前に始末する」
「させるとでも?」
「出来るさ。今日が満月なら、まだ少しはチャンスがあったかもしれないがね」
瞬間、ロボの体が跳ねた。
見えない。いや、正確には、何かが横切ったようには見えた。
それが、フォッケヴェルガーが飛び出して、ロボのみぞおちに拳を叩き込んだのだと、全ての動作が終わって初めてわかった。
「こっ……ほっ」
ロボもロボで迎撃はしようとしたに違いない。
だが、完全な狼男と、見た目がほとんど人間のロボでは戦闘力の差は明らかだった。
彼女は、純血種ではないから、満月の夜でもなければ狼男のような姿になれないと言っていた。満月は、まだ一週間以上先だったはず……。
なら、彼女に勝ち目は……ないんじゃないか。
しかし、ロボも呻くのは一瞬、すぐに反撃に転じた。
拳を握りしめ、殴りかかる。
――そう、殴りかかったのだ。
ロボが殴りかかるのが『見えた』。フォッケヴェルガーの動きは『見えなかった』のに。
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