第23話 銀の弾丸

 翌日はちょうど休みだったので市立図書館に向かった。地元唯一の図書館で、漫画は手塚治虫が数冊しか置いていないが、広さはそれなり。うちから微妙に遠い以外は便利だ。


 探すのは、人狼について書かれた本だ。


 おれはよく、この図書館を利用する。妖怪を見かける事が多いから、民俗学の資料は必須なのだ。


 あと、ウチにネットがないからだ。親父はメカ音痴であと普通に音痴で、他の面々も特に必要としていない。妹はスマホを持ってるし。おれには買ってくれないのに。


 まぁいい。どうせ携帯なくて困るのは本人じゃなくて友人なのだ。連絡がつかないから。


 それはさておき、狼男関連の本はたくさん見つかった。


 妖怪大百科だとか世界の不思議図鑑だとか、いくらでもある。


 だけど、あまり収穫は無かった。ロボが言っていた以上の内容は見つからない。


 弱点についても調べてみたが、銀の弾丸と書いている本もあれば、それは後世の創作だと書いている本もあった。


 それと、オオカミは大神、という説の乗った本もあった。ホロケウカムイとか、大口真神とか、そんな話も出ていた。何というか、どの文化圏でも、オオカミの扱いだけ別格に感じる。北欧神話のフェンリル狼なんて、神の血を引いている魔獣で、神まで食べてしまうし。


 そんな相手から命を狙われるかもと思うと、改めてそら恐ろしさを感じる。


 ひとしきり本を確認し、それから駅前の輸入雑貨屋に向かった。


 純銀のアクセサリを購入するためだ。弾丸は無理にしても、持っているに越したことはないだろう。いざという時に武器に使えそうな、先の尖った星形のキーホルダーを選んだ。


 もちろん純銀は高い。サイフの中身どころか、貯金まで全て消えて涙目だ。


 他に出来ることももう無いので、ロボにもう少し話を聞けないか、一旦、自宅近くの例の神社に向かう事にした。


 だが、神社の境内にも、集会所にもロボの姿は無かった。


 まるで最初から居なかったかのようだ。いや、他の人にとっては、最初からいないのと同じだろう。

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