第22話 自分も我慢できるつもりだったのだが

 暗いニュースばかりのテレビを消して、眠りにつこうとした夜の一一時。


「……あのな、別れて三時間しか経ってないだろう……」


 実家の二階、田舎ならではの一〇畳を超える自室の窓に、そいつは外から張り付いていた。部屋の窓のそばの柿の木から登って来たらしい。


 胸部のダブルメロンがガラスに押し当てられ、なんというかその、卑猥だ。おれの自室はいつもざしきわらしがうろついているのだが、怖がって妹の部屋に逃げて行ったくらいだ。


「うむ。自分も我慢できるつもりだったのだが、体が火照って寝れない。せめて添い寝をしてくれてもバチは当たるまい」


 帰れ、と言おうとした瞬間――


 窓をぶち破ろうと拳を振りかぶっているのが見えた。


 実家住みとしては、それは勘弁願いたい。コイツは見えないし、絶対おれのせいになる。


 おれがしぶしぶ窓を開けると、野生動物めいた動きで素早く上り込んできた。


「では遠慮なく」


 と、後ろから飛びかかる様に抱き着いてきて、おれを布団に押し倒しやがった。


 抵抗? いや、できるわけがない。


 とても、柔らかいからだ。


 二つのメロンが押し付けられた背中が柔らかいからだ。もう言葉で言い表せないほど、至福の感触。それから、腹を挟む太股が柔らかい。どこかハーブのようないい香りまでしてくる。


 そして、すやすや寝息をたてながらもずっと後ろから舐められる耳たぶ。


 ――寝れるわけねえ。


 これで寝れる奴は、悟りを開けると思う。


 だが、ホールドする力は人間より上なので、おれは身動きすら取れなかった。


 生殺しのまま、朝を迎える事に――


 そして、目覚めて人んちの窓からの去り際に


「意気地なし、かな?」


 とか言って来たが、そもそもあのホールドから動けるヤツがいたら会ってみたい。

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