第12話 デッドボール

 仮にこれ以上何か出てきたとして、自分の直感が裏付けられるだけだ。


「そうか。話が早くて助かる、かな」


「何の用だ」


 食べるつもりか――とはやはり聞く勇気が無かった。


 もしその言葉が出てきたりでもしたら、どうしていいか――


「交尾しよう」


 飛び出したのは、とんでもない変化球でデッドボールだった。


 ちょっと何を言ってるかわからない。


 「ん? 聞こえなかった、かな? 交尾しよう。子作りだ」


 ……。


 思考に強制的なブランクが叩き込まれる。


「と、突然何を……」


 うろたえるおれを見て、心底怪訝そうに見つめてくるロボとやら。


「言葉通りの意味だ。それが全て、かな?」


「よ、余計わからん。人狼だとか、交尾だとか……何言ってんだよ」


「理解してるじゃないか。人狼が交尾をしたいだけ、かな。なにぶん、発情期なので」


 にぱっ、と音がしそうなほど、微笑む。その口元にはくだんの鋭い犬歯が見えた。

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