聖剣・エクスカリバー。

「エクスカリバーっっ!!」


 この目で見てしまった。ミサイルが爆発する様子を。しかもこの規模。


 核ミサイルで間違いないだろう。


 地上にほぼ到達しなかったのはエクスカリバーが身を投じて空中で爆発してくれたからだ。


「エクスカリバーぁぁ...」


 そう呟いても応えてくれる人はもう、ここにはいない。


 エクスカリバーと過ごした数日間は僕のどうでもいい日常を非日常にしてくれた。


 助けてくれた。


 沢山の事を貰い、何一つ借りを返すことは出来なかった。


 トボトボと歩きながら、そんな事を考える。


 涙はポロポロと止まる事はない。


 嗚咽をあげるならば、エクスカリバーを探せ。生きているかもしれないだろ。


 そう、考えて無理やり足を動かす。


 爆心地であろう場所には、金色に染まった美しい剣が一振り落ちてた。


「これは...何だろうか。」


 剣を持つと、何故か涙が溢れ出し、懐かしい感情が心を襲う。


「エクスカリバー...!」


 嗚咽をあげて泣いた。


 —————


 涙は止まった。覚悟も決まった。冷静になる。


 ここで、モルドレッドを待つ。


 それを忘れてはいけない。


 核ミサイルという事は放射線があるはずだが、死んでいない。多分、聖剣の能力だろう。


 あと、この剣はエクスカリバーと名付けよう。


 二刀流。やった事がないけど、エクスカリバーの想いも継いでいきたい。


「聖剣・エクスカリバー。」


 この双剣の新たな名前だった。


 —————


「円卓の騎士は何人いるかなぁ。」


 俺はヨーロッパのある講堂にいる。


 円卓の騎士の石像があった場所だ。


 最初はモルドレッドしか、いなかった。だが今なら誰かいるかもしれない。


 そんな希望をアーサー2世に話し、今ここにいる。


 石像がある、講堂の中心部。天井はガラス張りで太陽の光が差し込み、ヨーロッパの古い建築様式。


 そこには、ガヴェインがいた。


「ガヴェイン卿...?」


 彼の体は酷く傷つき、美しい講堂の大部分が瓦礫と化していた。


「うぅう...誰だ...?モルドレッドか...?」


 こちらをガヴェイン卿らしき人物がこちらを向いた。やはりガヴェイン卿である。

 黒い髪が特徴的で目が灰色。黒色の防具を着けた男はアジア人のような顔をしている。


「ガヴェイン卿!一体何が?!」


「裏切りの分際が何を言っていやがる...!」


「俺はアーサー2世に仕えました。彼はアーサー王の子孫らしいです。」


 俺は正直な事を話した。


「何馬鹿言ってる。俺はそんな馬鹿な事を言えとは言ってない。」


 こんな怪我でよく減らず口が叩けるな。


「なるほど...まあこれで合点がいった。」


「情報交換しませんか?」


「あぁ。そうだな。」


 やっと本題に入れそうだ。


「アーサー2世はアーサー王の聖剣を引き継ぎ、正式な後継者として今を生きています。」


「そんな所だろうな...」


「ガヴェイン卿はなぜ怪我を?」


「...」


 答えない。いや、答えたくないのだろう。ガヴェインは俺から目を背ける。俺にも分かる。円卓の騎士の誰かが裏切ったのだろう。だが、教えてもらわねば。


「昨日、マーリン殿が来たのだ。アーサーを殺そうと、提案してきたんだ。そしたら、ランスロットとトリスタンがあちら側についた。」


「マーリン様が?!そんな馬鹿な...」


「私も目も耳も疑ったさ。何せ、現世ここにいないはずだし、アーサー王も生き返っていなかったからな。」


 ここでふぅと息を吐く。かなり無理をしている事が分かる。


「私は抵抗した。だが、この無様。マーリン殿の魔術で3人とも消えていた。」


 何個か疑問は残るが、今聞くべき事を聞かなければ。


「3人はどこへ行ったか分かるか?」


「アメリカ、と言っていた。」


 軍事大国と、マーリン様が繋がっていた...?


 まずいかもしれない。早くアーサー2世の所に行かなければ...!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る