青年の、名前。(3/12一部修正版)

 エクスカリバーとモルドレッドが再び戦いを始めた同時刻———————


 ドゴォン


 また、爆音が鳴った。


 いつまで僕は城の中ここで待っていれば良いんだろう。すぐ帰ってくるとか言ってたのに。全然来ない。


 ふぅ。


 白い、息を吐く。


 城の中の辺りを見渡しても、エクスカリバーの石像(今はなくなっている)以外に石像が無かった。


 母は円卓の騎士がいるって言っていたのにまるでエクスカリバーしかいないようだ。


 そもそも、エクスカリバーは円卓の騎士なのかどうかという疑問は放っておく。

 あれを見た後に円卓の騎士ではない、というのもおかしい。


 アーサー王物語の場所はヨーロッパ。何かがあってエクスカリバーだけがシュバリエ帝国に残ったのか。


 結局、聞いてみないと分からない。


 —————とそんな事を考えながら、エクスカリバーを待っているのだが、かれこれ15分は過ぎただろうか。


 自分も行くべきなのか...?と嫌だと感じつつも行こうと重い腰を上げると。


 声が聞こえた。掠れるような声。



『...ぁ...はぁ』



 ピーーーー


 嫌な高音のノイズが一瞬だけ聞こえた。 


 そして、くっきりと優しく声が聞こえた。


『こんにちは。青年。』


「...え?誰ですか?どこかにいるんですか?」


 焦って周りを見てみるが、人の気配はしない。


『ふむ。そこに私はいないぞ。』


 当たり前だ。と言われているようで何か悔しい。


「どうゆう事ですか...」


『頭の中で会話しているにすぎない。私は今、アヴァロンにいるのだから。』




 聞いた事がある。アヴァロン、それはアーサー王が傷を癒すために行った場所。一説によるとただ眠っていただけ、というのもあった気がする。




『青年。君の名前はなんだ。』


 


 この人結構ズカズカ聞いてくるな...


「言えない。」





『知らない人だからか?違うだろ。』





 まさか。僕の事を知っているのか。

 よく考えたらそうか。アヴァロンにいる人物。一人しかいないだろう。







『アーサーの名前がついているのではないか?』







 本当に久しぶりにその名前を聞いた気がした。

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