出会い

エクスカリバー。(3/12一部修正版)

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 ただ走る。生きるために逃げる。


 かと言って、逃げる場所もない。全てが戦場になるのだ。どこに逃げても意味がない。


 それでも、少しだけでも良いから、生きたい。

 死にたくない。


 奇襲隊のいる山を降りて、家屋が沢山ある、街に降りてきた。


 音と光は山の頂上で鳴り響く。あれが止まったら、後は防衛するだけ。いつ終わるのだろうか。


 終わる頃にはもうこの国はないだろう。


 分からない。何をすればいいのだろう。街なのにも関わらず、人の気配が全然しない。皆、避難しているのだろう。


 今泥棒だって出来るがそんなのには意味がない。かと言って家に帰ってただ恐怖に怯える事もしたくない。


 手の震えが止まらない。どうする?頭はパニック。


 走馬灯というのだろうか。それとも、自身を殺させないように防衛反応が働いたのか。


 あの日の母の言葉を思い出す。


『——円卓の騎士が見守っている————危機が来たら、助けてくれる———。』


 そんな言葉だっただろうか。そんな夢物語はあるはずがない。もう知っている事だったが、それしかする事が無かった。


 そう言えば、昨日雪が降ったんだ。


 軍隊の招集の道の反対を通っていたので、新雪を踏みしめつつ思った。


 子供はこの雪ではしゃげたのに。


 楽しみすら奪った事に怒りを覚える。


 そして。


 子供の頃。1回だけ入ったこの城の扉を開ける。


 ギィィイィィ...


 何年間ぶりに開いたような音がする。


 扉を開けると、石像があった。これは円卓の騎士の一人だったのだろうか。この王様のような佇まいはあの有名なアーサー王なのだろうか。


「どうか頼みます。石像さん。今、国の、国民が危険に晒されています。もし、この状況を知っているならば、応えてくれませんか。」


 僕は地面に膝をつき、必死に懇願する。アーサー王か分からないただの石像に目を閉じ、手を合わせて祈る。










「もちろんだ。我はシュバリエ帝国を守る騎士なのだから。」











 

 この声は。顔を挙げると石像はいつの間にか無くなっていた。




「我の名はエクスカリバー。アーサー王に仕えた、最強の騎士である。」




 円卓の騎士でないはずの名前を、聞いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る