第14話 マミの日常
あたしには、お姉ちゃんが二頭いるの。
一番上がレン姉ちゃん、二番目がロロ姉ちゃんと言ってね。んで、一番下があたしよ。ちなみに、名前はマミって言うの。トシは十五歳よ。担当のトレーナーさんはカノさん。本名は確か、カノハラさんって言ったかな。明るくて朗らかな女のヒトなの。
あたしがじっと見つめても、なかなか気づいてくれないのが玉にキズだけど。
朝方に、めんたるチェックをしてもらう。姉ちゃん達は慣れた様子だわ。あたしもカノさんとハイタッチをしたりした。
「……ハハッ、おはよう。マミ」
『キュー!』
「うん、元気いっぱいね。さ、マミ。今日も頑張ろうね!」
カノさんがにっこりと笑う。あたしも水面から顔を出して、頷いたわ。
トレーニング中、カノさんはあたしにサインを出してきた。
出されたのは「胸ビレでバイバイ、客席で」だった。両手でバイバイのポーズの後にあっちだと指をさす。あたしは頷く代わりに、客席の近くまで泳いで行ったの。体を乗り出して、両方の胸ビレでバイバイをしたわ。パシャパシャとすまほでシャシンをとるお客さんがたくさんいるわね。
あたしはそれを見た後、カノさんの元に戻った。
「マミ、はい。お魚よ」
『キュイ』
ちゃんとできたご褒美にカノさんはサバやシシャモをくれたの。両手にたくさんね。あたしは口に入れてもらうと、ゴックンと飲み込んだ。
次に、氷をくれる。あ、レン姉ちゃんが羨ましそうにこっちを見てるわね。実はレン姉ちゃんはおなかの中に赤ちゃんがいるの。だいじを取って、サブプールでお休み中なんだって。あたし、心配ではあるけど。カール兄ちゃんがいるから、ひとまずは安心かな。
カノさんとショーの合間に、ゆっくりとくつろいだ。ロロ姉ちゃんも一緒だよ。
「ねえ、古野さん。レン、いつ頃に赤ちゃんが生まれるんですか?」
「うーん、たぶんだけど。今が二月でしょ。だから、今年の十二月頃だと思いますよ」
「へえ、そうなんですね。どんな子が生まれるのかなあ。楽しみです」
カノさんがルーさんに姉ちゃんの赤ちゃんについて、訊いていた。あたしも気になるなあ。男の子だったら、あたしより大きくなりそうだけど。女の子なら、同じくらいかなあ。
そう考えながら、赤ちゃんが元気に生まれますようにとも願ったのだった。
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