第10話 レンとカール
あたし、ああ妹には言われたけど。
どうしたもんやら、また頭の穴からため息がコポコポ出る。まあ、カールの事は気になるわよ?
けど、彼が来てからまだ、二日よ。二日!
ロロに言われたみたいにいきなり、カレシ扱いできるわけないでしょ。仕方ない、ちょっとずつはカールとも仲良くしないと。そう決めたのだった。
カールはあたしに、割とフレンドリーに接してくれるようになる。お魚をくれたり、一緒に遊んだりしてくれた。トシをきいたら、あたしよりは二歳程上だったけど。
『へえ、レンちゃんは俺より下だったのか』
『うん、カールさんの方が上とはね。意外だったわ』
『本当だな、俺は二十二かあ。なら、この水族館では俺が一番年上だなあ』
カールはカラカラと笑いながら、言ったわ。あたしもつられて笑う。コポコポと頭の穴から、泡が溢れ出た。
『あ、ルーさんだ!あたし、そろそろ行くわ』
『待って、俺も行くよ』
『……分かった、行きましょ』
あたしはそう言って、カールと一緒にゆっくりと泳いで行った。その様子をルーさんやカノさん、ムーさんなどトレーナーさん達は微笑ましげに見ている事などあたしは気づかなかったけど。
「……あ、レン。カールも。仲が良いわね」
『キュイ』
「ふふ、もしかしたら。カールがレンの彼氏になるのも秒読み状態かしらねえ」
『……』
「どうかした?レン」
あたしはロロと同じようにルーさんが言うから、じっと見つめる。あたし、まだカールをカレシとしては見てないわよ。まあ、いいとこ、親友かしらね。そう思いを込めたら、ルーさんは苦笑いしたわ。
「分かった、分かったから。ごめんって、レン」
『……キュー』
分かってくれたんなら、いいのよ。そういう意味で鳴いた。カールもちょっと、困惑しているわね。あたしはやれやれと水面から、空を眺めた。黄昏たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます