第4話 ルーさんとのハイタッチ

 あたしは今日も、パフォーマンスを頑張った。


 プッシングリフトや回転、スーパーダッシュなどなど……。ルーさんが次々に繰り出すサインを読み取り、素早く反応していく。最後に、大技のスカイロケットをサインで出された。ちなみに、水の中でね。

 あたしはプールの一番深くまでルーさんを口の先に乗せたまま、潜った。

 そして、水面まで一気に上がっていく。水面に来たら、ルーさんが膝をグッと曲げる。あたしは彼女を頭や首の力で放り投げた。ルーさんもジャンプして空中を飛んでいく。


「「おおー!!」」


 席にいたお客さん達が一斉に歓声をあげた。あたしはルーさんが弧を描くように、飛んで。水の中にジャポンと入るのを見届けた。すぐにルーさんが水面に浮かんでいるのを確認すると。再び、口の先に彼女は足の裏を付けた。

 素早く、水中でサインが出される。あたしは頷いたりする代わりに、それを実行する。


 水面に行き、ルーさんは足の裏を口の先から外す。あたしの背中に彼女を乗っけたら、落とさないように気を付ける。そうしながら、一気にプールサイドまで突き進む。あたしも陸上に乗り上げた。


 ルーさんを乗っけたまま、最後のレスキューランディングを披露する。丁度良い時に音楽も鳴り止んだ。ルーさんはあたしの背中の上でビシッとポーズを決める。お客さん達の歓声と拍手が鳴り響く。


「「「わぁー!!凄い!!」」」


 ルーさんが深々とお辞儀をする。あたしも真似をした。そしたら、より拍手が鳴った。

 ひとしきり、拍手が鳴っていたのだった。


 お客さんが席を立つ頃、ルーさんがサインを出す。「戻っていいよ」という意味だと分かる。あたしはプールの中に体を反転しながら、戻った。

 ルーさんはあたしに片手を差し出す。胸ビレを同じように出して、ちょんと当てた。いわゆるハイタッチというらしい。

 ルーさん、割とこれが好きなのよね。いい笑顔で彼女はあたしに笑いかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る