第6話 闇の組織、今日を持って終了

「コメント欄でみんなが言ってるけど…君、闇の組織ダークシークレットの魔術師なのかい?」


!?


(何故バレた!?俺が魔術師だと気付いたことは100歩譲って理解できるとして、何故ダークシークレットというところまでバレている!?コメント欄で気づいた?俺の存在が明るみになっているのか?)


「いや、俺はただの凡人さ、何か勘違いしているんじゃないか?メランコリーという名の憂鬱に脅かされ、シンドロームという名の症候群を患ったというわけかな?」


よし、いい感じに平常心を保てている。おそらく組織の誰かが裏切り、情報漏洩したのだろうが、普通そんな事を一般人が信じるわけがない。


「マスター。同接視聴者が1000万人を超えましたがどう対処するおつもりですか?」


「何を言っている。俺はただの一般人だ。誰に見られようと構わない」


「もしかしてお気づきになられていないのですか?状況から察するに、戦闘を開始する前から組織回線ではなく全国配信になっており、組織回線になっていると勘違いなさっているのかと…。少々ハッキングして覗かしてもらった事にお詫びを申し上げます」


(は?嘘だろ?全国配信になってる?まてまて、俺がそんなヘマをするわけがない)


俺は言い返せず、慌ててドローンを確認する。


ふぅ、なんだ、脅かすなよ。ただの冗談だったのね。


そういえればよかったのだが…。


「嘘だろ、ガチで全国配信になってやがる…いつから?同接1000万人?コメントの数多すぎだろ…」


「さっき言ったじゃないですか。『戦闘を開始する前』からですよ」


俺は顔が青ざめた。


いや、青ざめるとかの次元じゃなくてもはや紫、いや、黒色にまで変色していただろう。


まあ比喩表現なのだが。


「リーダー!リーダーに相談しないと!」


俺はスマホでリーダーに電話をかけた。


「リーダー!俺間違えて配信を全国配信にしてしまった」

「慌てるな!映画の広告だとか言って誤魔化せ!」

「それが、別の配信者と遭遇してしまって、リアルタイムの配信だとバレてしまったのだ」

「なぁ〜に〜?やっちまったな!」

「ふざけてる場合じゃない!」


リーダーの頭がおかしくなってしまった。俺はなんて事をしてしまったんだ…。


するとリーダーが、今度はドスの効いた声で話しかけて来た。

「お前はやってはならない事をしてしまった。死んで償うのも甘々しいほどの大罪をな。永遠とインフェルノのラビリンスで彷徨うがいい。絶対である我ら…」


バキッ


怖くなってスマホを破壊した。


「どうしたらいいんだ…」


「マスター。だからあの時忠告したじゃないですか」


「あれ忠告だったのか?もっと具体的に言わないと分からないだろ!耳元でちょっと「配信全国になってるよ」って言えばよかっただろ!?」


「マスターなりに考えがあってのことだと…私はてっきり…」


今考えてみると生体反応と電気信号って、配信者と配信ドローンのことだったのか…。


「え?待てよ?お前ってまさか…ガチでアンドロイドなのか!?」


「だから最初からそうと言っているではありませんか」


俺は頭を抱えた。


どう言うことだ。ミスって全国配信してしまって、さらにはダンジョンの遺産であるアンドロイドのマスターになるし…。


「君、顔色悪いけど大丈夫かい?一緒に地上まで戻ろうか?」


「大丈夫だ。ちょっと悪夢(ナイトメア)を見ているだけ、のはずだ」


ーーーーーーーーーーー

餡子位のコメント欄


“これガチっぽくね?www”

”本物の闇の組織がいたってこと?www“

”リアクションもやらかしたって感じだし…”

“冷静に考えて現実世界に魔術があるのがヤバいんだが“

”興奮して来たwww”

“闇 の 組 織 現 実 で ワ ロ タ“

“神回すぎるだろwww”

“全国配信になってるの今まで気づいてなかったのかよwwwwww“

”あのアンドロイドも本物のダンジョン遺産ってこと!?!?”

”なんかヤバいことになってないか?“

“このまま配信者になってくれたら1番おもろいのになwwwwwwwww”


ーーーーーーーーーーーーー


俺の人生は終わった…。


待てよ。


「俺、今日から配信者になろうかな」

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