第4話 運命の分かれ道
「私はマエストロ専用アンドロイド。チャルム・シュライン・996463GK。こっちの世界ではいわゆるダンジョンの遺産です」
これはネタとして言っているのか、はたまたガチでダンジョンアイテムなのか…
「俺は流れがわかるぞ。その設定は俺について行きたいのだろう?だがシュラインよ、俺は闇に生きる人間だ。其方のような美しい人間の来る世界ではない」
目がぱっちりしてまつ毛が長い。それでいて吸い込まれそうな瞳を持っているクールでどこか幼さを有しているアンドロイドと名乗る美女。髪が首のあたりで揃えられていて綺麗に曲線を描いている。前髪が斜めにぱっつんになっているところもセンスがいい。正直言ってドストライクだ。
俺に興味を持ってくれたのは嬉しいが、本当に俺と関わってはいけないのだ。闇の組織にとどまらず国家や政府にまで目をつけられ襲われる可能性があるからだ。彼女をそんな目に合わせたくないというのが本心だった。
「俺はマスターでもマエストロでもない。人違いだ。其方に合った『光の差し込むような人間』を選べ」
「マスターの意見を否定したくはありませんが間違えている点が多すぎます。私は最初に出会った人物をマスターにするプログラムが組まれています。それに人違いなんてことはありません。この世界は運命によって決められているのです。貴方がマスターである事は決して揺るぎません。強いていうなら『光の差し込むような人間』を私は選びます。人を照らし、そして光に愛されるようなそんな貴方のような人間が私はいいんです。それに個人的に私はマスターのツールになりたいとも思っています。それが例えどれだけ困難な事であっても」
すごいな。俺並みのマシンガントークではないか。よくそこまで早口で言葉が思いつくな。
だが俺に光がある?本気で言ってるのか?こんな黒ずくめなのに。よくわからないやつだな。
「本当に困難な道になるぞ。俺はネタじゃなくてマジで闇の組織なのだ。俺についてくる覚悟はあるのか?」
「解。出来ています」
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コメント欄
“これは名作”
”もう既に面白い事は理解した“
“この映画早く見たくなってきた”
”闇の組織で最強の主人公に謎のアンドロイドって言う掛け合わせからワクワクを引き立たせてる“
“どんな冒険が待ってるんだ?”
”ハイファンタジー?それともローファンタジー?“
“同時視聴者700万人言ってるぞww”
‘この時点で既に続編決定しそうじゃないか?wwww“
”みんななんでこれが映画だと思ってるの?現実の配信だよ?”
“んなわけないだろwww“
”小学生が騙されてて草”
“これマジで現実の配信だったら腹筋1万回やるわ“
“↑言ったからな”
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「俺についてくるのか?」
「はい。その通りです」
「じゃあデス・スケルトンの討伐を手伝ってもらおうかな。深層にいるって事は相当強いんだろ?」
「無論。強いです」
「じゃあ俺について来てくれ。場所はわかってる」
「北北東1648メートル進んだ地点ですよね」
「まぁ、その辺だけど…」
「そこには生体反応と電気反応があります。配信を切らなくて宜しいのですか?配信しているとリスクが跳ね上がりますよ」
この時の俺はなんのことかよくわかっていなかった。デス・スケルトンは骨だから生体反応も電気信号も発しない。何かの雰囲気作りだと思った。1つ気になる点が、透明化されていて人に見えるはずのない配信ドローンの事をなぜか認知していた事ぐらい。だが口調から配信者とバレたのだとそう思っていた。
リスクって言うのは配信のコメント欄に気を取られて戦闘に集中できなくなるとかそんなことか?だが俺は全国配信をしているわけではなくリーダーに記録として一応流しているだけでコメントを読むわけでもない。なんならコメントは表示していない。
「コメント欄」と書かれている場所が邪魔だから消しているのだ。
もしもの時はスマホで十分。
そんな誤解をしていた時期の自分を殴りたい。
彼女が言っていた本当の意味は…。
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