playing
「ねぇ!君!!」
僕は彼女に、呼び止められた。
「僕ですか?」
一体何の用だろうか。木から降りられなくて困っているようには見えないが。
「そう!そこの君!!今から一緒に鬼ごっこをしない?」
——聞き間違いだろうか。僕には、『鬼ごっこをしないか』という誘いにしか聞こえなかった。鬼ごっこ?なぜ?ましてや、彼女とは初めて出会ったはずだ。初対面の人に鬼ごっこを持ちかけているのか?誰かと間違えているのではないだろうか?
そんな疑問を巡らせているうちに、少女は木から降りていた。
「私が鬼ね!特にルールは無し!もし30分間逃げ切ったら、この場所に集合ね!」
IRゴーグルで彼女のことを検索してみるも、応答はない。やはり初対面であることに間違いはない。それに、いつの間にか彼女は始める気のようだ。
「じゃあ、10秒数えたら開始ね!」
やはり始める気のようだ。別に彼女に付き合う理由はない。だが、いきなりカウントダウンを開始した彼女を見て、体は勝手に動き出していた。
——正直、勝負は圧勝だった。僕が原子ブーツを履いている以上、彼女が僕に追いつけるわけがなかった。
「楽しかった!遊んでくれてありがとね!じゃあね!ばいばい!」
そして彼女は、気づくと消えてしまっていた。
いったい何だったんだろうか。彼女は何者なんだ?結局名前は聞けなかった。まぁもしまた会うことがあれば、今度こそ聞いてみよう。
それから、僕は彼女と何度か遊ぶようになった。週に2回ほど、彼女は決まって毎回同じ木の上に座っている。そしてその度、彼女が僕に声を掛けるのだが、彼女は決まって昔ながらの遊びを僕に提案するのだ。あるときは鬼ごっこ。あるときはかくれんぼで、またあるときは、缶蹴りで遊んだ。
だが、僕が彼女の名前を知ることはなかった。ゲームが終わると、彼女はすぐに姿を消してしまう。始まる前に声をかけようとしても、僕が質問するより速く、ゲームを始めてしまう。そして、彼女は消える前に、必ず僕にこう告げる。
『じゃあね!ばいばい!』
と。
そしてある日——
「ねえ!こっち来て!見せたいものがあるの!」
そう言い、彼女は僕の前を歩く。そしてたどり着いたのは——とあるビルの屋上だった。
世界の終わりに、君と @newrookie
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