第5夜 辛くて甘いカレー

夜遅くに、いそいそと推し活から帰宅したら、ドアの横の換気口から野菜の甘い匂いが漂っていた。


部屋に入ると、正体はカレーであった。


そう言えば、留守番する娘が

「カレー作ろうかな!でも出来てなくても、文句言わないでよね」


と、わざわざ釘を刺しつつ高らかと宣言していたっけ。


私は疲労困憊こんぱいであったし、感動で胸がいっぱいで、とてもカレーの気分ではなかったのだが、普段全く料理をしない子が折角作ってくれたのだ。


それに、この量!

大鍋になみなみと煮えている。


そもそも上手く作れているのか?

私は覚悟を決めて、よし、といただくことにした。


「ママは小盛りでお願いね。」


そう伝えると、今日だけ気の利く娘がよそってくれた。


それにしても、ふんわり甘い匂いがする。


どかっと腰掛けた私の、目の前に運ばれてきて、やっと分かった。

薩摩さつま芋がゴロゴロ、これでもか、と入っていたのだ。


じゃが芋は、冷蔵庫の奥にあったのだけれど。目に付く所に置いておいた薩摩芋を、何も考えずにチョイスしたのだろう。


面倒くさがりの娘らしい。


しかしこれが、思いの外、美味しかったのだ。


カレールーのスパイスと、薩摩芋のねっとりとした甘みが、何ともいえずマッチしている。

玉葱や人参の甘みとも喧嘩をせず、豚こま肉の旨みにも合っていて、素晴らしい。


かなり大量に薩摩芋が入っていたのだが、甘党の私は、そのカレーらしからぬ優しい甘みに疲れが癒やされ、お代わりもしてしまった。


娘は、ふふん、と鼻高々だ。


後で聞いたら、何と、蓋を開けて、強電(我が家のIHコンロは、強、でやっと中火)でニ時間弱も煮込んでいたとか。


圧力鍋なのに?


私は、電気代が少なくなる様に、いつも気を付けながらIHコンロを使用している。加熱時間のやたら短い圧力鍋は、そんな私の味方なのだ。


それなのに…!

今日で、電気使用量がぐんと増したではないか!


仕方ない。甘い薩摩芋に免じて、許すことにするか。


今回は種類は、甘太くん、という芋を使った。ねっとり系なら何でも合うと思う。


ゆっくり煮込む時間が無ければ、野菜類はレンチンすれば、時短でもつくれそうだ。


是非、お試しあれ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る