第11話
「待ってくれよ葉月。なんでそんな嘘をつくんだ。そんなことしたって意味ないだろ」
クラスでの立場が悪くなったからといって俺の意志が揺らぐことがないことぐらい付き合っていた葉月なら分かるだろうに。
案外葉月は俺のことを分かっていなかったかもしれないな。
クラスメイト達は俺のことを怪訝そうな目で見つめている。これから居心地は悪くなるだろうが、卒業できればいいので特段問題はないと言える。
妊娠が嘘だというのは証明しなくても分かる。もし強情に言い張るのであれば妊娠検査薬を使えば済む話だ。
葉月は俺のことを理解していなかったようだが俺は違う。葉月とは約三か月ほど付き合っていたので大体のことは把握しているつもりだ。
俺も引き下がらないが、葉月も引き下がらない。どうやら話し合いにもっていくしかないらしい。
あまり話し合いは苦手なんだよなー。葉月は頭よく、機転がいいので今まで口喧嘩で勝てたことは一度もない。
でもこのまま逃げていれば一生解決しないのは目に見えているわけで…正直恐怖という気持ちがあるが頑張ろうと思う。
「確かに意味はないけど…これはまあ前準備ってやつかな。この行為自体には意味がないかもしれないけど…家に帰れば話は変わってくるよ」
「家?お前もしかして家族になにかしたのか?」
「ううん、何も手出してないよ。心配しなくて大丈夫」
「…そうか?」
果たして信じていいのだろうか…なんて愚問考える前に結論づいている。葉月は家族、というよりも舞に接触を図ったのかもしれない。
昨日の景色が夢じゃないとしたら、舞が葉月に協力しているとしたら、きっと俺は不利な立場に立たされている。
舞を出されると弱い。
「分かった。じゃあそういうことにしとくよ。それで葉月に言いたいことがあるんだ」
「何、復縁してくれるの?」
「それはない」
「は?なんで?」
「なんで、って。この前話しただろうが、俺は葉月のことを思って苦し紛れに別れを告げたんだ。俺といない方が葉月は幸せになれるって」
俺を言葉を聞いたクラスメイト達が態度を変えだした。
「確かにそれは虹橋のいう通りだな。あんなやつと付き合ってたら葉月ちゃんが可哀そうだ。幸せになれない」
「そうだね、虹橋の言う通りだ」
「葉月さん、あんあやつと付き合うなんてやめておいた方がいいよ。妊娠はつらいとは思うけど、○○か○○させれば済む話だよ」
クラス中が葉月への心配の言葉をかけだすタイミングで朝礼のチャイムが鳴ったと同時に担任が入ってきた。
どうやらこの件は先送りになるそうだ。
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