第4話 別れることが無ければ、めぐり逢うこともできない

「葉月のことで話があるんだけど、いい?」


 音無さんは葉月と親友と呼べる仲といっていいだろう存在だ。昔葉月と話した時に音無さんとは幼稚園の頃から親交があると話していた。

 なんとなく小さい頃から馬が合ったらしく、高校生になるまでずっと同じ進路を進んできたらしい。


 俺にも幼稚園ほど昔ではないが小学生の頃からずっと仲がいい親友が一人いる。そいつは俺と同じこの高校に進学しているのだが、残念ながら他クラスなため学校で顔を合わせることなんてほとんどない。


「構わないが、別に有益な情報を持ってる保証はしないぞ」


「その心配はいらないわ。葉月から事情は聞いてるから」


「なんだ。それなら大丈夫だな」


 どうやら葉月は俺と別れたことを音無さんに話していたらしい。まあ親友なのだから、当たり前と言えば当たり前か。


 俺も今度親友にこのことを話してみよう。そして新しい恋でも探そうと思う。確かあいつは絶賛彼女募集中だったか。ならなおさらちょうどいいってもんだ。


「ええ、それで分かっているとは思うけどその件について二人で話したいことがあるの。時間もらえるかしら」


「分かった。昼休みに屋上でいいか?」


「ええ、よろしくね」






 昼休みになると俺はさっそく屋上へと向かった。音無さんはきっと少し遅くなるだろう。


 なんたって彼女は葉月とどうよう仲が良い人は多く、人望が厚い。普段教室で弁当を食べるとき彼女は多くのクラスメイトに囲まれながら食事をしていた。


 断るというのも辛いだろうにな。


 いつも一人な俺にはそんな気持ち知ったこっちゃないけどね。


 話とは一体何の話をするのだろうか。別れたことについて彼女は既に知っていると答えた。

 多分、なぜ別れたのかを聞かれると思っている。


 音無さんにもあの話をしないといけないというのか。正直俺たち二人の話なんだから深く干渉してこないでほしいのだが。


 嘘をついてもいいのだろうが、後々面倒なことになる予感がするのでやめておこう。

 もし嘘がバレて嫌な噂を彼女の口から広げられてしまえば、人望がない俺の居所はあっという間になくなってしまう。


「面倒なことになったな…」


「面倒なことに巻き込んで申し訳なかったわね」


「なっ、聞いてたのか」


「ええ、あなたは変な妄想をしていたようだけど心配はいらないわ。そして私が話したいのは葉月との別れ話についてじゃない」


「は?朝はその話だって言っていたじゃないか。騙したのか?」


 俺は少し怒気を含んだ声音で言った。


「騙したなんて人聞きの悪いことを言わないで。騙したつもりはなし葉月が関わってる話ではあるわ」


「じゃあさっさと済ませよう。正直もう葉月とは関わりたくないんだ。忘れたいんだよ」


「じゃあ未練はもうないの?」


「あるに決まってるだろ!」


 食い気味に返してしまった。大人げない。


「あら、案外情けないことを言うのね。意外だわ」


「悪かったな。俺は未練がましい男なんだよ。自分から振っておいて勝手だよな」


「ええ、そうね」


 そこは否定して欲しかった。


「でも私はいいと思うわ。だって私は一途な人が好きだもの。もしずっと私のことを愛すっていってくれる人がいたら私はその人を一生離さないもの」

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