第22話
赤い手帳 5
堀がつぶやいた「課長」とは堀の直属の上司である。美人で一流大学を出た会社では知らぬ者は無い存在である。当然、藤井も知っている。
堀「亡くなった人事部の立花さんとうちの課長が不倫関係だなんて、ショック!」、と驚きを隠さなかった。
藤井「驚いたなぁ。相手があの課長とは。これが本当なら大変な事になりそうだね」
藤井「Kとは人事部の立花さんだと言う事は分かった。殺されたか病死かどうかは調査中という事になっているね。でも、ほぼ殺人事件という事で報道していて、それも毒物を使ったらしいね」
堀「先走ってこの手帳を警察に持って行くのも早すぎるわね」
藤井「そうだね、様子を見守った方がいいよね」
この日はサークルの話や音楽の話で盛り上がり2人の仲はみるみる近づいていった。
次の朝の報道で、あの事件で使われたのはトリカブトではないかと具体的な話がなされていた。
何故に、何処で薬物を飲まされたのかとコメンテーターは言っている。
殺された立花が心臓に疾患がある事を知って少しづつゆっくりと死に至らしめたのか、とか、
さまざまな人がさまざまに推理をしても事件が明らかになる事はなかった。間違い無く暗礁に乗り上げている。
この日の夜のニュースで、藤井の会社の近くのドラッグストアの店員が満員電車の中でカッターで足の付け根の大動脈を切られ重症のニュースが流れた。ぼんやりと藤井は聞いていたがその頭の中に赤い手帳の映像が映し出された。
その内容と繋がっような気がして藤井はすぐに堀に電話をして、手帳の中のドラッグストアの女性と一致しないかと同意を求めた。
堀「これは大変なことよ。連続殺人事件に発展しかねないわよ。どうする?」
藤井「どうすると聞かれても、どうしようか。」
藤井はこの赤い手帳の存在が日増しに大きくなって行くのに驚きと不安を抱いている。
堀「今週の土曜日はどう?」
藤井「いいよ!会おう!」
藤井の心は会えることの喜びと彼女が藤井に好意を持っている事を隠す事無く接してくれているので喜びに溢れていた。
土曜日の朝は生憎の雨。渋谷のハチ公付近で待ち合わせ一つの傘で腕を組み夕方の雑踏の中を楽しむ様に歩きながら雰囲気のありそうな一軒の居酒屋へ入った。
大変な混み具合と話し声が店に充満していた。
これならどんな話も聞かれることは無いなと
藤井はおもった。堀も同じであった。
堀「驚いたわね!」とドラッグストアの女店員が刺された事件を言った。
藤井「本当だね!」
「手帳の話が歩き始めたね」と藤井。
堀「手帳を警察に持って行くなんて言わないでね。そんなことすると私達、面倒に巻き込まれるわ。それは嫌!」
藤井「俺も嫌だね!」
2人はもう一度、ゆっくりと手帳を読み直し考えてみようという事になった。
また、驚きなのは立花のスマホには疑わしい人の着信も発信の履歴が無いことは社員間の話で大体伝わってきている。
不倫相手の結城課長の名が出てきてもよさそうなのだが。
殺された立花と結城課長はどの様にデートの日時をお互いに伝えたのか。
この問題を解く鍵はやはりこの手帳にあるのだ。それと二人の行動である。
結城課長のよく知られた行動は決まったように
近くの公園のテーブル付きベンチに座って缶コーヒーを飲む姿であると、藤井は堀から聞かされた。何時も一人で一日の疲れを癒している様だと言うのである。
それを聞いて藤井はその日定時に退社し例のベンチへ向かった。一つしか無いベンチなので間違い無く結城課長ぬ座るベンチである。
テーブルも付いて書き物もできそうである。
ぼんやりとそれを眺めているとそこに、
R2/6 7 R2/12 8 が小さく意味ありげに小さく幾つも書かれていた。藤井がそれが気になったのは赤い手帳の中にRとそれに続く数字の列が意味ありげに並んでいた事を思い出したからである。
藤井「Rと数字か・・・」と呟き、その意味も分からないままに藤井は家路をいそいだ。
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