第21話
赤い手帳 4
女性と初めて心を開き話ができた喜びで、翌朝の光を格別な想いで目覚めた藤井は昨日の事を思い返した。
赤い手帳と堀と言う女性とが交錯している自分を藤井はあやしんだ。
毎朝のルーティンを繰り返し出社。
電車の中で浮かび上がる赤い手帳。この事を堀さんに伝えるべきか。藤井の心の中ではこの件を一人だけで抱える事に自信が無くなっていた。誰かと共有したいのである。心の負担を軽くしたいと思っている。そう思えばここからの先ははやい。
すぐにでも堀さんに話したいと思いメールを入れた。すぐに返信。次の日曜日同じ場所と時間で決まった。藤井の心は待ち遠しさでゆれている。
そんな中、kさんの死因は薬物中毒と大きくテレビ報道されている。その報道に社内は揺れている。kさんの周辺の警察による聞き込みは当然社内にも及び落ち着かない雰囲気は仕方のない。仕事上でkさんに電話した人間は全て捜査対象であるらしい。
しかし、そこから疑わしい人物は出ていないらしい。堀さんとのデートでその辺りを聞くのを期待して日々の仕事をこなした。
土曜日、藤井はこの赤い手帳を手に取り新ためて読み返すとKが別の女性二人と交際をしているのでは、と疑っている事が書かれている。一人は居酒屋の店員、もう一人はドラッグストアの女店員である。確かにKは長身でハンサムである。しかし結婚をし2人の子供もいる。
と、読み返すうちに一日の疲れに襲われ藤井は眠りについた。
翌朝、快晴。
藤井の毎朝のルーティン。ただ今日の服装は違う。鏡の前に立つ事数回。やっとそれで満足し
赤い手帳をバッグにしのばせ渋谷のあのカフェへと駅へ急いだ。
約束の時間、店内の窓際に堀さんが居て手を振ってくれて藤井の心は何かが一気に弾けた。
弾む心を抑えるように藤井は堀さんの隣に座った。とりとめのない話を交わした後、藤井は今までの出来事を細かく話し、堀の前に赤い手帳を置いた。
藤井「拾った時間からしてこれは社内の人間のものだと思う。時間は9時」
堀はそれを見て僅かに驚いた様である。
しばらくの沈黙の後
堀「もしかしたらこれは、課長・・・」
藤井「これ見た事があるの?」
堀「確かじゃ無いけど、こんなに鮮やかな赤はもしかしたら・・・」
藤井「中も見てくれる?」
堀は読むうちに引き込まれる様に沈黙が深くなっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます