第13話
お昼の空
ある発展途上国の話
父をなくしたばかりの少女がいる。
歳は12歳
家は貧しくその母も夫を失い元気をなくしている。
その一方、少女の性格は明るくキラキラとしている。これからは、母が家計を支えなくてはならない。
ある日、母親は学校には行かせられないと少女に言った。
小さいながらに家が大変な事は理解していたが少女は学校に行きたいと必死に訴えた。
母親はうつむいて、頭を横に振るばかりである。少女は、それでも必死に言葉を続けた。
水汲みも、今までの倍以上やって見せると言い畑仕事をもっと、もっとがんばるとも言った。
それでも、母親はよい返事をしなかった。
少女は泣きながら「お昼の弁当はいらないから」と言った。
わずかの間をおいて、母親は、学校に行くことを許した
それほどにゆとりがないのである。少女は父親が亡くなったことをあらためて悲しんだ。
それでも少女は学校に行けることのうれしさから水汲みを一生懸命にやった。
水汲みはつらく家で一番の大切な仕事である。
家から井戸までは2㌔のでこぼこ道。
台車に乗せて運ぶのだが少女の力では1時間程かかる。それを2往復する。
その水は生活用水でもあり畑仕事に使うものでもあり生活に一番大切なものである。
12歳の少女にとってはつらい仕事である。
ようやく、学校に行く許しをもらって久しぶりに友達に会えると思うと少女の心は弾(はず)んだ。久しぶりの教室に入るとみんなが声をかけてくれて楽しい授業が過ぎていった。
そうして、お昼の時間となった。
友達が「一緒に食べよう」と誘ってくれた。
少女は「家に帰って食べてくるから」と明るく答えた。
そういって少女は、学校の裏山へこっそりと行き昼休みが終わるのを待った。
切り株に腰をかけて遠い空を眺め子供らしい夢を描いたりした。
待つ時間は、少女が想像していたよりずっと長く感じられた。
しかし、それをつらいとも悲しいとも思わなかった。
それほど学校がすきなのである。
しかし「家に戻って食事をした」とうそをつくことが少女にとっては悲しいことであった。
このような状況が数ヶ月たったある日。
少女は、水を無駄に使った事を母親にとがめられ強く叱られた。
そうして、つらい水汲みを更に一往復言いつけられたのである。
母に反抗する事もなく、涙を流しながら井戸へと向かった。
そうして事故はおきた。
台車ごと、くぼ地に落ち込んで少女は足を痛めたのである。
それが原因で、一人で水汲みも出来ず母の負担が一つ増える結果となった。
少女は責任を感じて小さな心を傷めた。
あの明るさも失われていった。
その日も、
いつものように、学校に行き、
いつものように、友達にうそをついて学校の裏山に行こうとしたその時、教室の出口のところで、母親が手にお弁当を持って立っていたのである。
そうして母親は温(あたた)かな笑顔で、それを少女に渡した。
少女はたまりにたまった悲しみを一気に吐き出すように、涙を流し、声を上げた。
そうして、母親にしがみついて泣いた
その少女は成長して、国際機関に職を得て、貧困と食糧の問題に取り組んでいる。これは実話。
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