014 こちら大佐だ。カエルよ、突入して敵を引きつけろ
――赤ゴブリンを追いかけ続けて3時間は経過したのではないだろうか。
「ハァ、もうすぐ日が暮れちまうぞ」
「ゲコッ!」
またしても舌を伸ばし方向を指示してくるカエル。その方向を見ると、夕焼けに照らされた集落のようなものが見えた。
「やっと着いたのか。つーか、集落でかすぎだろ。無策に突っ込んだら流石にまずいぞ」
先に進もうとするカエルの頭を鷲掴みにして止める。舌による抵抗を受けるが、ここは譲れない。
「さて……イテッ……どうしたもんかな……イタタ! おい! 作戦考えてるんだからお前は大人しくしとけ!」
俺は夜に奇襲する作戦を考え、夜を待った。
「やっと夜になったな」
俺は全身に泥を塗った。
「泥で匂いと色をカモフラージュする。お前は……まぁ、カエルは元々泥だらけだからいいか」
ゴブリンの集落は、かがり火が設置されており、闇夜に怪しく浮かび上がる。
これから死地に潜入するというのに、俺の精神は落ち着いていた。
「……行くぞ」
俺は闇に紛れてゴブリンの集落に接近した。ゴブリン達は集落の真ん中にある広場に集まっている。そして、その広場で何かしているようだ。
「あいつら、何してんだ……?」
俺が藁で出来た家の影に隠れながら、目を凝らしてよく見る。
多数の緑ゴブリン、少数の赤ゴブリン、それと、中央には一際大きい紫色のゴブリンも居るようだ。その見たことのない紫ゴブリンの隣には……ヤギが居た。
「なんでヤギ……?」
俺は最初何かの儀式でもしているのかと思っていた。何故ならヤギと紫ゴブリンの周りにいるゴブリン達は跪いて祈りを捧げているからだ。そして、儀式といえば生贄がよく登場する。
だが、ヤギの首には紐もなく、檻に入れられているわけでもない。逃げようとすればいつでも逃げられるはずなのに、逃げようとしない。
そして、紫ゴブリンも跪き、その場で立っているのはヤギだけとなった。
「ライオンの住処に子羊を見たら、子羊のほうを恐れよ、って聞いたことあるが、こういうことか……だが、このまま様子見をしても仕方がない。とにかく、ミッションを開始するか」
俺はカエルを見るとハンドサインを送る。
「ゲコ?」
所詮、カエルか。ハンドサインを理解していない。
「こちら大佐だ。カエルよ、突入して敵を引きつけろ」
「ゲコ!?」
カエルは驚いて一瞬固まる。その隙を見逃す俺じゃない。
「フッ、遅い!」
俺はカエルを掴んで集落の真ん中に投げ込んだ。昼間に俺が止めなければカエルは集落に突っ込んでいたはずだ。結果は同じだ。
「ゲコ〜〜!!」
覚えておけよ、とでも言いたげな鳴き声が響くが、逆効果だ。その声にゴブリン達が反応した。
「カエルよ、頑張ってくれ。さて、急ぐぞ」
俺は収納革袋から魔法ライターを取り出した。そして、藁の家に火をつける。そして、次の家に移動して火をつける。パチパチと勢いよく燃え上がる家を背後に、ぐるっと一周する。
「よし、これでゴブリン共は一掃出来そうだな」
火事は集落の周囲から真ん中に向かっていき、ほとんどのゴブリンを焼き尽くした。
残ったのは……
「紫、お前か。それと、ヤギ……」
「グルル……オマエカ?」
紫ゴブリンが人の言葉を話した事に一瞬驚いたが、初めてではない。
「ああ、俺がやった」
「ゴロズ!」
「俺の答えは――”NO”だ!!」
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