012 おい、そのセリフは……嘘だろ!?
2日後、カトゥー達の去った方向に行ってみることにした。一昨日は激痛のせいで一睡も出来ず、明け方に眠りについたせいで、その日は1日中寝ていた。つまり、カトゥー達が去ってから2日が経過してしまった、というわけである。
今から後を追っても到底追いつけないとは思うが、人が住む街を見つけることが出来るかもしれないし、方向だけでも見当をつけることが出来るだろう。
「これだ。奴らの足跡だ。雨が降る前に追いかけないといけないな」
「ゲコ」
「チッ、お前もついてくるのかよ」
以前、カエルがついてきた時は酷い目にあったのだ。カエルがついてくるとロクなことがない、と俺は思っている。
「ゲコ!」
カエルの舌が伸びて俺の顔を狙ってくる。
「おっと!」
シュッと俺の頬を掠っていった。俺はカエルの舌を避けることが出来て驚いた。今までは必中だったのに、今回は舌の動きを捉えてギリギリ避けることが出来たのだ。
「ゲコッ!」
カエルは少し溜めを作った後、さっきより速く舌を伸ばしてきた。
「ぐあっ」
さすがに反応できず、俺の顔面に当たった。俺は諦めて、拠点を出発した。
――数時間、奴らの足跡をたどって歩いたが、残念な事に沼地で足跡が途切れていた。
「くそっ、沼地で足跡が消えてやがる。……ここまでか」
俺が肩を落としていると、カエルがピョンピョンと沼地を進み始める。そして、少し進んでこちらを振り返る。
「お前、足跡が分かるのか……?」
「ゲコッ!」
カエルは一声鳴くと進み始めた。俺はカエルについて行って失敗したことがある。今回も騙されているかもしれないと思うが、他に手段がない。俺は仕方がなくついていくことにした。
しばらくカエルについていくと、沼地から川に変わった。そして、河原の砂利の上にアレが落ちていた。周囲にはオークの死体が転がっている。
「これは……カトゥーが持っていたレイピアか。オークと戦っている最中に落としたのかね」
カエルが俺を騙そうとしているのではないかと疑っていたが、どうやら本当に足跡を追っているようだ。
「このレイピアは高そうだなぁ。いつか街に行けたら、売って金に出来そうだ」
収納革袋にレイピアをしまっておいた。
その後の道のりは本当に本当に過酷なものだった。
・苔むした川を何度も転びながら下った。
・滝をどう降ろうか考えているとカエルに押されて滝壺に落ちた。
・森の中でカエルが一鳴きすると大量のゴブリンが現れて大乱闘になった。
・大木が突然動き出し、全てをなぎ払った。もちろん俺も吹き飛んだ。
・しれっと逃げていたカエルと合流し、森を進んだ。
・霧が出てきて薄暗い中、襲い来るゴーストを魔法ライターで振り払い逃げた
・ズタボロになりながら森を抜けた(イマココ)
「ハァ、ハァ……このカエルふざけんな! 大冒険すぎるだろうが!」
「ゲコ……モウ二度ト帰ッテクルコトハナイダロウ。サラダバー」
「おい、そのセリフは……嘘だろ!?」
俺の目の前には、見慣れた拠点の壁があった。カエルに誘導され俺の拠点まで戻ってきてしまったということだ。
俺は膝から崩れ落ちた。
カエルに頼ると、カエルの導くままに歩くことになる。そして、それはロクなことにはならない。もうカエルに頼ることは辞めようと、俺は決意した
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