社会という世界で化け物と戦う村人Bの話

11月24日

　強くならなきゃこの世界では生きていけない。

　僕の周りにいる人はみんな強いように見える。

　勇者のスーツも僕より何倍も似合っているし、堂々としていてかっこいい。

　かっこいい服に負けないぐらいの笑顔を浮かべて毎日戦っているから、きっと本当に強いんだと思う。

　場違いだと思った。僕がこのスーツを着ているのは。

　だから、このスーツが似合うぐらい強くならないといけないと思った。

　今はまだ守ってくれる騎士がいるけれど、騎士だっていつまでも守ってくれるわけじゃない。

　騎士は僕なんか以外にも守らなきゃいけないものがたくさんあるから、だから、僕は強くならないといけない。

　強くなったら化け物を倒せるの？

　答えは明解、いいえだ。

　この世界にいる化け物は年を重ねるごとに強くなっていく。

　本当は強さなんて変わってないけど、強くなっているように化け物自身が錯覚するから、僕らもそれにだまされる。強くなっているように、思ってしまう。

　だから僕があいつらに勝つなんて幻想でしかない。

　だったら僕は強くなる必要はないのだろうか？

　これの答えもまた、いいえだ。

　化け物は弱いものにすごく強くなる傾向がある。

　弱ければ弱いほど化け物の餌食にされてしまうというわけだ。

　逆に言えば強くなれば化け物の標的にされることは少なくなる。

　今の僕は弱すぎるから、強くならなければいけない。

　強く、ならなければ。