第3話 選ばし者だけの特等席

人間は、積み重ねた箱を倉庫から屋内へと慎重に運んだ。ある部屋の前で立ち止まる。重たそうな扉を開けると。


そこは、一面が銀色でとても綺麗な場所だった。


闇の中で育った俺達は全員目を奪われたに違いない。下にいる兄弟達にも見えているだろうが、選ばれし者だけに許された特等席とはこの事だ。こんなに光る場所は見たことなく眩しい。


そこには、先に運ばれていた。人参や玉ねぎ達がいる。

そいつらも見るからにデカイ。すでにシンクの水の中で綺麗に体が洗われていた。

あの水を浴びたら気持ちいいだろうな。と色々想像が広がる。


帽子にマスク、手袋をした人間が近寄り手を伸ばして真っ先に俺を掴んだ。光る流し台のところに担ぎ込みこまれ、水道と言われる蛇口をひねり滝のように流れる水を全身に浴びて土や泥が洗い出されて行く。


泥まみれの兄弟達には悪いが大きさゆえの特権だ。

洗われた俺は、玉ねぎや人参の横に並べられた。

そして、次から次へと、他のじゃがいもが洗われた。


俺の横に一番デカイ奴が座り、離れたところに子分が座った。子分は、離れたところから、まるで、兄貴ー!と手を振っているように笑顔で顔をこちらに向けている。それに答えるように兄貴は、少し揺れている。


本当に早く消えて欲しい。そう思った時、人間が子分を持ち上げて煮えたぎる鍋の中にそのまま放り込んだ。俺は、思わず笑ってしまった。奴らには、お似合いだ。俺様を侮辱した罪だ。


そして、その周りのまぁまぁ大きな奴らも次々と放り込まれ人間は、更に火力を強めた。苦しいと暴れているのだろう。鍋の中から、コトコト音がしている。人間もうるさいと思ったのだろか、蓋を閉じた。


ざまーみろ、もうこれで、兄貴に声は聞こえない。これで、兄貴も舎弟がいなくなり、さぞ悲しんでいる事だろう。と思い隣を見ると無表情だった。こいつが何を考えているのか分からない。本当に早くこいつを懲らしめたい。そう思った時、帽子とマスクに手袋をしたデカイ人間がやってきて左手で軽々兄貴と呼ばれたじゃがいもを持ち上げた。


よく見ると、右手には、皮をむくような鋭い刃がライトに照らされて光る。

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カレーになったじゃがいも Tomoパパ @tomopapatomo

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