第42話 お土産

「はぁ……これで終わりか……」


「お疲れさまでした!これでお仕事終了ですよ!」


俺達は最後の商談を終えたところで宿に向かって歩き始めていた。


「村松さん〜!ご飯連れてってくださ〜い」


「おいおい、なんでそうなるんだよ」


「せっかくここまで来たんですから美味しいもの食べたいじゃないですか♪」


「俺既婚者だしそんなことしたくないんだけど……」


何が楽しくて危ない橋を渡らないと行けないのだろうか。

美優のためなら人間関係を全て捨てる!とかそういうことを言ってるわけじゃないけどこんな美優も知らないところで異性と二人きりで食事なんて嫌なんだが。


「もう……お堅いなぁ……」


「別に束縛されてるわけじゃないけど俺はあいつと別れるなんて絶対に嫌だからな」


「ほんと愛されてますね〜」


「ほっとけ」


高梨は楽しそうに笑う。

特に気にした様子はないようだ。


「代わりに戻ったらいつかランチ奢ってやるよ。敬太ら辺を連れていけば別に浮気でもなんでもないしな」


社員何人かで昼を食べるのは別に普通だ。

二人きり、というのが引っかかっているだけで高梨とご飯を食べるのが嫌なわけじゃない。


「やったぁ!じゃあ駅前に新しくできた話題のイタリアン連れてってください!」


「あそこ結構高いって噂じゃなかったか!?遠慮ないな……」


「そこで嫌だって言わないのが村松さんの優しいところですよね」


「まぁ今日は俺の都合で断ったわけだしな。それくらいは……認めたくないけどいいだろう」


本当に癪だが……

その分美味しくなかったら絶対に承知しないからな。


「それじゃあ行きましょう!」


「は?どこに?」


「決まってるじゃないですか……スーベニアショップですよ!」


高梨は謎の決め顔と共に謎に英語にして宣言したのだった。


◇◆◇


「わぁ……色んなものが置いてありますね!」


俺達が来たのはここらへんで一番大きくて口コミも良かったお土産屋。

昼を奢るから美優へのお土産選びを手伝ってくれるらしい。

意外と義理堅いんだなと関心していたら『私もお土産買いたかったのでちょうど良かったです♪』と言われて少しだけ感謝が薄れた。


「どんなもの買いましょうか?」


「まあせっかくだし名物を買いたいよな」


「有名なのは……ういろう、きしめん、味噌煮込みうどん、しるこサンドとかですかね?」


「ああ」


大体俺が調べたラインナップもそんな感じだったし有名どころだろう。

物はあっても困るだけなので食べ物が良い。

元々俺も美優もそういうグッズ類はほとんど持っていない。

あるとしても俺達共通の想い出の品があるくらいで個人的に買って見返すことはお互いしないタイプなのだ。


「奥さんはどんなものがお好みで?」


「どら焼き……というか和菓子に目がないな。甘党ではあるけど洋菓子はあまり好きじゃないみたいだし」


美優いわく生クリームとか重すぎて嫌いではないけど好きじゃないらしい。

和菓子の優しい甘みが好きなんだとか。

まあどら焼きをたまに会社終わりに買ってくると見るからに目が輝くしな。

わかりやすくていい。


「ではういろうは外せませんね!」


「ああ。元々ういろうは買うつもりだったからちょっと調べてきたんだ」


他のお土産は現地で良いものを探すつもりだったけどういろうは間違いなく美優が喜ぶのであらかじめ良さそうなやつを調べておいた。

迷うこと無くたくさんの種類の中からお目当てのやつを探し出しカゴに入れた。


「ふふ。もう一つとっておきなのがありますよ。ちょっと待っていてくださいね」


そう言って高梨は何かを探しに言った。

待つこと一分ほど、高梨はなにやら缶のようなものを持って戻ってきた。


「なんだ?それ」


「じゃーん!小倉あんです!」


高梨が手渡してきたパッケージを見るとあんこの写真が美味しそうに写っていた。

なるほど、確かにこれは頭から抜け落ちていた。


「トーストに乗せるもよし!ぜんざいにするのもよしですよ!あぁ……白玉ぜんざい食べたい……」


「これはいいな。妻も喜びそうだし多めに買っていくよ」


俺は高梨に小倉あんが置いてあったところまで案内してもらい3個カゴに入れた。

少し多いかもと思ったが美優があっという間に食べてしまうのはわかりきっていたので買うことにした。

その後は隣の県が有名なお茶の生産地ということもあって抹茶も売っていたのでそれも買うことにした。


「ありがとう。これで妻も喜んでくれると思うよ」


「私もいい買い物ができたので問題なしです!村松さんから奥さんのお話を聞いて社員旅行で会うのも余計楽しみになってきちゃいましたし」


「まあちゃんと紹介するから」


「はい!」


あとはもう帰るだけだ。

早く美優に会いたい。

このお土産を渡して喜んでいるところを想像して今日の夜は眠りについた。


────────────────────────

ちなみに砂乃はこの県に住んでるわけじゃないですw

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る