第13話 小悪魔美優だ
ファーストキスを経験した俺達は肩を寄せ合っていた。
幸せな気持ちのまま遊んでいる子供達を眺め続ける。
二人とも黙ってお互いの温もりを堪能していたが美優がおもむろに口を開く。
「子供って可愛いと思わない?」
「思う。見てて微笑ましいよな」
俺の言葉に美優が頷く。
体を少し倒して頭を俺の肩に乗せてくる。
「いつかは子供と一緒に来たいなぁ……」
「そうだな………え!?」
さらっと言われたがめちゃくちゃ大切なことだった。
いつかは話し合わなければいけない問題だ。
だがいきなり聞かれて少し驚いてしまう。
「拓哉は子供欲しくないの?」
「そ、それは……欲しいと思ってます……」
「ふふ、ならよかった」
美優はそんな俺の様子を見て楽しそうに笑う。
俺もつられて笑顔になる。
美優となら……大丈夫だ。
どんな問題が起きても協力して乗り越えていける。
そう確信した。
「さあ、そろそろ帰ろう。風邪をひくと良くないからね」
「うん。私達の家に帰ろう」
立ち上がり美優と手を繋ぐ。
今までは繋げなかったのに今回は自然と繋ぐことができた。
そして甘い空気のまま帰路についた。
◇◆◇
家に帰ると美優が美味しいご飯を作ってくれた。
メニューは白米、味噌汁、野菜炒め、ほうれん草のごま和えだ。
パパっと短時間で作っていたのに美味しすぎてびっくりした。
しっかりとおかわりまでして完食する。
そして今は二人並んで皿を洗っていた。
こういうのも新婚みたいでいいよな……
「それにしても美優の料理は本当に美味いな」
「たくさん食べてくれてありがとう。時短で凝ったもの作れなくてごめんね」
美優が申し訳無さそうな顔で謝ってくる。
初デートの夜は豪華に作りたかったらしいのだが明日から仕事だしあまり時間をかけて料理を作れなかったのだ。
「作ってもらってる側なんだから文句なんて言わないよ。それに文句を言う必要もないくらい美味しいし」
「そう言ってくれると嬉しいな」
美優が作ってくれた料理に文句なんて言うはずがない。
好きな人が自分のために料理を作ってくれるだけで嬉しいものなんだから。
「そういう訳で全く問題はなし。お風呂いれてあるけど先に入る?」
「いれておいてくれたんだね。じゃあ先に入らせてもらおうかな」
「ん。いってらっしゃい」
美優は風呂に入るべく立ち上がって部屋を出ていった。
俺は残りの洗い物を終わらせるべくスポンジをこする。
すると美優がタオルなどを持って戻ってきた。
「どうしたの?何か忘れ物?」
「ううん。拓哉も一緒に入るかな〜って」
「え!?」
美優と一緒に……風呂!?
そりゃあ入れるもんなら入りたいが直視できる気がしない。
今の俺達には明らかに早すぎるステップだ。
「や、やめておくよ。洗い物は俺に任せて入ってきてくれ」
「ふふ、冗談だよ。困らせちゃってごめんね」
美優は
もし入りたいと言ったら一緒に入ってくれたんだろうか。
俺は煩悩を振り払うかのようにいつもよりしっかり皿をこすっておいた。
……小悪魔美優だ。
◇◆◇
〜美優Side〜
(や、やっちゃったぁぁぁぁぁ!!!!!)
私は浴槽に張られたお湯に浸かり頭を抱えていた。
原因は先ほどまでの私の大胆な行動。
(お風呂に誘うなんて……はしたない女だって思われてないかな……?)
私にとって拓哉は全てだ。
拓哉に嫌われてしまったら生きていけない自信がある。
それなのに今日のファーストキスが嬉しすぎてつい拓哉をからかってしまったのだ。
(でも拓哉からキスしてくれた……!)
さっきまで自己嫌悪に陥っていたはずなのに拓哉とのキスを思い出すだけで顔がニヤけてしまう。
お湯にそんなに浸かっていないはずなのになんだか少しのぼせてきてしまった。
いつもより短いがお湯から上がる。
(もう一回体を洗っておこうかな……)
何をとは言わないがする可能性もあると思ったので2回体を洗うことにした。
一回目より念入りに体を洗い髪をしっかり乾かしてリビングへ向かった。
「ただいま。次入っていいよ」
「おう。おかえ……り……」
拓哉は私を見て固まった。
お風呂上がりだし色気でも感じてくれてるのかな?
そうだったら嬉しいな。
男の人にそういう目線を向けられるのは嫌だけど拓哉なら嫌じゃない。
むしろそういう目で見て欲しいとすら思う。
「どうしたの?拓哉」
私が近づくと拓哉は顔を真っ赤にして顔を背ける。
やっぱり色気を感じてくれてるんじゃないかな?
先程の反省も忘れ拓哉をからかうべく更に近づく。
「顔が真っ赤だけど大丈夫?」
「そ、それは……」
これはいよいよ私に魅力を感じてくれているんだと確信した瞬間拓哉が言いづらそうに口を開いた。
「美優の服のボタンが開いてて……その……」
「へ?あっ………」
拓哉に言われ自分の姿を確認したら第二ボタンまで開き胸が強調されるような格好になっていた。
いつもの癖で暑いから無意識にボタンを開けたままにしていたのだ。
自分の顔がどんどん熱を帯びていくのがわかる。
「そ、それじゃあ俺は風呂に入ってくるよ!」
拓哉は赤面してしまった私を気遣ってくれたのかお風呂場へと走り去っていった。
私はリビングに一人の状態になる。
「は、恥ずかしい……」
ありえない自分の自爆に恥ずかしさが止まらなかった。
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