第77話 肥満騒動2

 この肥満騒動。

 もっと酷いことになっていたのが天界だ。


「(アキラ。ワテが恐れていたことがおこっとるわ……)」


 天界の神々が見る影もなく太っていたのである。



「(数ヶ月ぶりに天界に来てみたら、なんや姉ちゃん。その姿は)」


「いや、ちがうねん。目の錯覚や」


「(姉ちゃん、なんやそのアホな言い草は。なんでそない太っとるんや)」


「まあ、理由はわからんでもないですけどね。セリア街の神官たちと同じでしょ」


「(マックの食べすぎっちゅうことやな)」


「せやけどな、一つハンバーガー食べるやん?すると、もう一つ、ってなるやん。ほんでな、デザートもとかジュースもってなるやん」


「そうだとしても、僅か数ヶ月でどんだけ食べたんですか」


「そんなでもないで?」


「(姉ちゃん、縦より横のほうが広いやんか。歩くよりも転がったほうが速いんちゃうか?)」


「なんちゅうことゆーねん!セクハラやぞ」


「まあまあ」


「あのな、これうちだけやないねん。他の女神もな、すぐにこの機械嗅ぎつけてん」


 ああ、いやな予感が。


「女神だけやない。そのうち、男神とか主神様も押しかけるようになってな。みんな、すごいことになってんねん」


「この機械は天界には早すぎたんですね。回収しますわ」


「ああ、そんな!頼むわ!もってかんといて!」


「もう、マ◯ク依存症じゃないですか?」


「ちゃんと、コントロールするさかいに」


「じゃあですね。僕がダイエットプログラムを組みますから」


「ああ、せやせや。そーゆー使えること言ってほしいねん」


「プログラムにはあの魔道具使いますから」


「あの魔道具?」


 清貧教会の教徒には

 毎日のボランティアを義務付けている。

 それを監視する腕輪がある。

 その腕輪を生産する器具が清貧教会にある。

 なんの素材も必要とせず、

 自動的にいくつでも腕輪が生産されるのだ。

 そして、その器具は天から与えられたものという。


 実はその生産器具。

 僕が作ったものだった。


「ダイエットするためには、食事制限と運動。これをプログラム通りに行うと誓いますか?」


「あったりまえや。余裕やん」


「それを監視する魔道具をつけてもらいますが、いいですか?」


「え?」


「ちょっと不安ですから、行動を強制し、行わないと罰を与えるようにしますが、大丈夫ですか?」


「えっ?」


「他の人達にも集まってもらいましょう。天宮に集まるよう、連絡してください」


 ◇


 主神はじめ、マ◯クに群がった神様・女神様が

 一斉に天宮に集まった。


「ここに集まった皆さんは、自分の体に自覚がありますね?」


 全員、見事な肥満体をさらけ出している。


「マ◯ク依存症と考えられます。今後もマ◯クを食べたいのなら、僕のダイエットプログラムに参加してもらいます。食事制限と運動プログラムです」


「問題なしですな。余裕、余裕」


「それを監視する魔道具をつけてもらいますが、いいですか?」


「え?」


「行動を強制し、行わないと罰を与えるようにしますが、大丈夫ですか?」


「えっ?」


「皆さんの意思を確認してこの腕輪をつけることになりますが、一旦YESの返事をしたからには、仮に主神様であってもこの腕輪は取り外すことはできません。強制的にプログラムが実行されます」


「えっ?えっ?」


 結局、全員プログラムに参加することになった。

 マ◯クの魅力には抗えないのである。



「それにしても、不思議ですね。そんなにマ◯クが美味しかったんですか?いや、美味しいのはわかるんですが、ちょっと度を超えてる気がするんですが」


「確かにそうだ。抑えがきかんようになるんだ」


「そうですわ。食べたくて食べたくて夜も大変なんですのよ」


「儂の考えを述べたいんだが」


「なんでしょうか、主神様」


「天宮汚部屋騒動の時も思ったんだが、何か邪な波動を感じるのじゃ」


「邪な波動?」


「うむ。推測なんじゃが、黄泉の国からの間接的な攻撃のような気がするのじゃ」


「黄泉の国ですか」


「汚部屋事件じゃがな、確かに清浄システムが壊れておった。しかしの、儂らも掃除する、という気が起こらなんだ。掃除担当のものがおるのじゃが、彼らが掃除しなくてもなんとも思わなんだのじゃ。なんというか、気力がゆるくなるというか」


「だとすると、相当なコントロール能力じゃないですか」


「うむ。マ◯クも似たような攻撃を受けたような気がするのじゃ。なんというか、儂らを堕落させるような」


「むむ、ではその波動の解析が必要ですかね。合わせて対抗策を図り、腕輪に盛り込みましょう」


 ◇


 僕たちは技術系の神々とチームを立ち上げ、

 とうとう堕落波動の発見と解析に成功した。


 そして、その波動をシャットアウトするべく、

 結界を天界全域に及ぼした。


「おお、アキラよ。なにかつっかえたものがなくなったような、すっきりした気分じゃぞ」


「ほんまや。以前ほど、マ◯クとかスィーツに気持ちがいかんようになったわ」


「ああ、それならマ◯クとかはなしの方向で」


「あほか。それはそれ、これはこれや」


 

 ダイエットは長期にわたった。

 結局最低でも半年、長いと1年もの月日を

 厳しいダイエットに費やすことになった。


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