第76話 肥満騒動1
さて、いろいろと一段落したある日。
地上と天界で騒動がおきた。
いや、起きたというよりも、
徐々にはっきりし始めた。
「(なあ、アキラ。教会の神官たち、なんやぷっくらしてきたな)」
「ラグもそう思う?健康的と言えばそうなんだけど、前なんかほっぺたガリガリだったのに、今はかなり丸いもんな」
清貧教会だけあって、元々の食事は
お世辞にも豪華とは言えなかった。
固い黒パン、薄い塩味スープに
ふかしたじゃがいも。
肉とかはまずお目にかかれなかった。
それが、車メニューのおかげで改善した。
清貧教会は清貧を尊ぶのだから、
教会的には改善というのかわからないけど。
でも、車メニューは栄養的に豊かだけじゃない。
彼らの能力をアップしていく。
彼らも元の清貧に戻れないんだよね。
「シスター。食生活が豊かになったのはまさしく神のお恵みですが、どうでしょう。清貧教会的に正しいのかどうか……」
などと言い出す神官もいる。
「では、あなたは今日から以前の食事に戻りますか?」
「ごめんなさい。見栄はってました」
現存女神として
徐々に王国の信仰の対象となりつつあるシスター。
彼女でも、スィーツの魅力からは逃れられない。
地球でも砂糖は問題になっている。
砂糖依存症がある、とも巷では囁かれている。
ドラッグよりも依存する、
などと宣う人もいるぐらいだ。
砂糖が貴重品であるこの世界であれば、
甘みの威力は数倍にもなる。
眼の前に宝石の如くきらめくスィーツが。
神官さえその魅力に抗えないのだ。
いや、スィーツだけではない。
ハンバーガー等のジャンクフード。
アメリカがデブ大国になったのは、
70年代以降である。
ジャンクフードの価格が下がり、消費量が増える。
その経緯と肥満の増加には関連性がある。
そういう報告がなされている。
庶民的な、つまり貧相な食事をしてきた神官たち。
そこにカロリー豊富なハンバーガーを投入する。
肥満にならないほうがおかしい。
「アキラ様。少しご相談が……」
シスターからダイエットの相談がまいこんだ。
「ダイエットの基本は食事制限と運動ですが……」
「やっぱりそうですね。わかりました。頑張ります!」
「ただ、急激な食事制限は危険です。運動にしてもやり方があります。どうでしょう。私のほうから皆さんにあったプログラムを提示しましょうか?」
「そうなんですね。助かります」
「あとですね。ダイエットにも間接的に効果のあるデトックスというものがあるのですが」
「まあ。それはどういう?」
「体に溜まった老廃物や体に良くない物質を排出するという意味でして、そのためのドリンクがあります」
車がレベル8になったときに、
アリ◯ミンDの強化版アリ◯ミンDデトックス
というのが提供されていた。
適切な運動・食事制限とともに服用すると
便秘解消、美肌効果、脂肪燃焼、むくみ改善
など、様々な効果があるという。
「あらまあ!それはぜひ頂きたいですわ!」
この飲料だけじゃなくて
いろいろな努力の結果、
神官たちの肥満は徐々に改善されていった。
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