第74話 女神様の家は
清浄システム修理の過程で思い出した。
僕はこのシステムを作ってるときに
シスター、つまり本当の清浄の女神と
仲良くなったんだ。
少しずつ記憶が蘇ってきている。
僕たちの家も訪問した。
宮殿からは転移魔法陣で一発だ。
残念ながら、僕たちの家は半壊していた。
例の騒ぎのときに壊れてしまったようだ。
半壊した家を見て、ムカムカと腹がたってくる。
◇
家の近所にはラグの姉上、臨時清浄の女神が
住んでいる。
「(ねーちゃん、可愛い弟がきたで)」
「うちんとこには可愛い弟はおらんけどな。ぶっさいくのならおんで」
「(照れんでもええがな。あがらしてもらうで)」
「ちょっと、外でまっとき」
「(ええやろ?うわっ)」
汚部屋どころじゃなかった。
「(ねえちゃん、なんやここ。ゴミ屋敷やないか)」
「だから、外でまっときゆーたやろ。宮殿とおんなしや。清浄魔道具が壊れてもーたんや」
「(ねーちゃん、昔から掃除せんかったやろ。でもな、このゴミの山はないわー)」
「食の女神と清浄の女神、兼任しとったからな。めっちゃ、忙しかったんや」
「(いや、臭いし。カビとかはえてんで)」
「ちゃんと住めてるから問題あらへん」
「(ていうか、清浄の女神様やろ)」
「家の外では綺麗なもんや。一応な、宮殿に自分の部屋があんねん。転移魔法陣でひとっ飛びのな。清浄魔法付きのシャワー室とかあるし。服とかもお付きが洗ってくれるしな」
「(この家には侍女とかおらんのか)」
「だから、ゆーたやろ。人手不足やって」
「(まがりなりにも、天界の女神様やのに。姉ちゃん、不憫すぎるわ)」
「良ければ、清浄の魔道具をいろいろ作りましょうか?」
「ああ、なんて素晴らしい響きですこと……あかん。よそ行きの言葉は疲れるから、地の言葉でいくわ。えっと、カルマン、今はアキラ君やったな。頼むわー。ほんまにいろいろ壊れてんねん」
僕はさっそく粗大ゴミ焼却ユニット、
生ゴミ分解魔道具、汚れ落とし魔道具、
消臭魔道具などを作り上げた。
魔道具師スキルは清浄システムを修理するときに
はっきりと自覚できるようになった。
◇
「やっぱ、カルマン、アキラ君。天界の魔道具師なだけあるわ」
「(ほんまやで。あのゴミ屋敷があっという間に新築同然やんか)」
「新築よりピカピカしとんで」
「これ、自動じゃないんで。一応、掃除する意思は必要ですから」
「ああ、まかしとき。チョチョイのちょいや。それはそうと、アキラ君。はよ出しーな」
「え?……ああ、遅れましたが、これ、つまらんもんですが」
「つまらんことあるかいな♪当然、スィーツやろな♪」
「各種ケーキの詰め合わせです」
「むほほほ♪ほな、頂くで♪」
「ねーちゃん……」
◇
「ふう。ほんま、アキラ君のスィーツは最高やな。ほんでな、相談があんねん」
「(アキラ、きかんでもえーで。どーせ、しょーもないことや)」
「あほか。真剣な悩み事なんや。あんな、毎日スィーツを祭壇に供えてくれてるやろ、それは物凄く感謝しとんねん。せやけどな、それが他の女神どもにバレてしもーてな」
「(な、アキラ。ゆーたやろ)」
「口とじとき。やつらを黙らしてやりたいんやけど。ホンマに、毎日うるさいねん」
「あー、こんなのどうでしょう。出張メニューというものがありまして」
「ほうほう。ちょっと見せてーな」
出張メニューとは、車のメニュー選択機を
外でも使えるようにした機械だ。
但し、メニューはマ◯クのみ、
しかも、半分ぐらいに制限されている。
車がレベル8になって実装された。
「ほお、スィーツはちょっとしょぼいやんか。でも、ハンバーガーはおいしそうやな。一つ頼むわ」
「じゃあ、僕たちもご飯食べますか」
ということで、久しぶりのマ◯クだ。
マックバーガー、
てりやきチキンフィレオ
スパイシーマックチキン
といった基本的なメニューから
てりたまバーガー
といった限定メニュー、
フライドポテトやチキンナゲット
など、請われるままに次々と取り出していく。
「ハンバーガーって初めて食べたけど、ごっつ美味いな。スィーツにしか目がいってなかったけど、これはこれで食べるのが止まらんわ」
「じゃあ、ですね。この出張メニュー機をおいておきましょうか。みなさんで召し上がってください。あ、魔石の補充は忘れんとってくださいよ」
「アキラ君、ほんま、あんたは使える男やわー。ありがとな」
「(アキラ、ワテ、ちょっと嫌な予感がするんやが)」
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