9 天界編

第72話 レベル8になった

 さて、セリア街は一段落した。

 セリア街の孤児院や湖畔村方面の事業は

 まだ道半ばである。


 しかし、主神様のとにかく早く天界に来てくれ、

 という要望をかなえることにした。


 僕としても、急な展開すぎて、

 今だに頭の整理がついていない。

 それを落ち着かせる、という意味もあった。


「なあ、ラグ。天界に行く、って簡単に言うけど、どうすんの?」


「知らん。多分やけどな、車をレベルアップするついでにそう願ったらどうや?主神様の話によると、アキラの願いが車に反映されるっちゅう話やんか」


「そうかな?じゃあ、魔石投入してみよっか」


 僕はラグに魔石を融通してもらうと

 車のダッシュボードにねじ込んだ。


『魔石が485個投入されました。レベルアップしますか?』


「『YES』」


『パンパカパーン!レベル8になりました!乗員は車の外に出てください』


 流石にバスコンよりは大きくはならないだろうと

 油断して見ていると、

 おかしな変形をしている。


「今回はトレーラーかよ……」


 出現したキャンピングカーは。

 キャンピングトレーラー+SUV。


 この特徴あるキャンピングカー。

 Ja◯coのキャンピングカーにそっくりだ。

 いよいよ外国製の車を参考にし始めたのか。


 まあ、レベル7のバスコンの時点で

 日本最大級だったもんな。


 全長9.5m、全幅2.5m、全高2.5m。

 車両重量 約2700kg。


 レベル7よりもさらに広く豪華になった。

 広さは1LDKでもおかしくないサイズ。

 豪華さは一流ホテルなみ。

 普通に住居にしても問題ないぐらいだ。

 アメリカだとキャンピングカーに住んでる人、

 結構多いみたいだし。


 もっとも、この車を買うような人は

 大豪邸持ちの大金持ちだと思うけど。


 これを引っ張る車は、

 どう見ても、トヨタのラン◯ルだ。

 いや、レク◯スのLX600っぽい。

 噂によると納期予定5年という話の車。



 この辺の車になると、僕の日本的な

 しかもパンピーど真ん中の僕の感覚では

 高級車すぎて触るのがもったいないぐらい。


 汚れても魔法ですぐにキレイにできる。

 でも、しょっちゅうタオルで磨かなきゃいけない感じ。


 うーむ、僕は天界の住人らしい。

 それが仮に本当だとして、

 天界に行っても僕の貧乏性が続くんだろうか。



 さて、肝心の天界機能。


「これか」


 ダッシュボードのパネルにでっかく表示された。

 『天界行』の文字。


「ほら、やっぱりやんか。アキラの希望が反映されるんやで」


「うーん、こんなにでかくて豪華な高級車っぽいの、持て余すんじゃないか……」


「何、ゆーとるんや。シスターも乗るんやで。おおきいほうがええやろ」


「ああ、シスターにはピッタリだな。なんだか、僕はシスターの下僕みたいな気がするんだけど」


「なに卑下しとんねん。天界では夫婦やったんや」


 夫婦か。

 もう、全然実感がわかないよ。

 転生したんだから別の人格になってるよね?


 いや、「お願いします」って片手を出して、

 「ごめんなさい」ってシスターに言われたら、

 まことにショックなんだけど。


 まあ、考えないことにする。



 というわけで、他の機能は。


 まずは、大注目のメニュー。

 なんと、【ロ◯ヤルホスト】。

 わー、パチパチパチ!


 事実上のファミレス最高峰レストラン。

 1コインが基準だった僕にとって、

 まったく眼中じゃないというか、

 僕がお呼びでないと言うか、

 そういうお店。


 ランチとかだとそんなに高くないし、

 いわゆる超一流レストランに比べれば、

 ずっとリーズナブルなんだけど。

 

「こりゃ美味すぎんで」


 僕もラグもメインは同じものを頼んだ。

 厚切りワンポンドステーキ。

 なんと、450gのビッグサイズの

 アンガスサーロインステーキ。

 そんなに霜降り牛じゃなくて、

 赤肉部分がしっかりある、肉肉しいステーキだ。


 香りからして素晴らしい。

 特徴のある、牛肉を焼いた香ばしい香り。

 ナイフを入れると肉汁がジューと滴り、

 のぞかせるレアの部分が食欲をそそる。


 そのまま、口にいれると、

 濃厚な肉の香りが口腔内に広がり、

 一口かめば適度な噛みごたえとともに

 濃厚な肉汁が。


 噛み締めた肉が喉を通る時も快感を感じる。

 同時に鼻に抜ける香気にうっとりする。


 なんといっても、僕は1コインだから。

 1コイン料理が基準だから、

 ロイ◯ルホストの料理なんて高嶺の花。



 その高嶺の花のメニューをオーダーする。

 僕は

 真鯛・海老・帆立のあつあつグリル~温野菜添え

 フライドチキンとソーセージの盛り合わせ

 オマール海老のクリームスープ


 ラグは

 海老と帆立のあつあつグリル ~温野菜添え~

 粗挽きソーセージのグリル

 オニオングラタンスープ


 最後は二人共コーヒーを飲みつつ、

 非常に満足。



 あとね、チェーン店機能ってのがついた。

 車についているメニュー機械。

 あれの簡易版を外に持ち出せる。


 オーダーできるのはマ◯クだけなんだけど、

 十分でしょ?



「では、シスター。僕たちはちょっと天界に言ってきます。マ◯クのメニュー機おいておきますので、ご自由に。魔石はたっぷりセットしてありますから、無茶しなければしばらくは大丈夫のはずです」


「ありがとうございます」


「シスターも天界へ行かれませんか?」


「ええ、まだ気持ちの整理が……」


「ああ、それはわかります。僕もまだ記憶がほとんど戻っていません。なんとなく、天界にいたかも、ぐらいで、それも夢物語のように感じています」


「私となりますと、そのおぼろげな記憶さえありません……」


「そうですか……まあ、焦らずやっていきましょう。では、後ほど」


「はい、行ってらっしゃい」


 おお、シスターの笑顔。

 眩しくて正視できないや。



 車のダッシュボードから

【天界へ】

 のボタンを押す。

 ふわりと車が浮いたかと思うと、

 無重力状態を感じる。


 それも僅かな時間で、

 気がつくと草原に囲まれていた。

 そして、眼の前には荘厳な宮殿が。


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